第三話 恐ろしい父上
ぎぎぎと、扉が開いたさきには見たことも聞いたこともない豪華な空間が広がっていた。
天井には巨大なシャンデリア、部屋の壁にはこれまた巨大な垂れ幕、巨大な玉座に巨大な窓。とにかく何もかもが大きい。さらに
「すごい……」
僕が見とれたのは、その大きさに不釣り合いなほど細かい細工だ。あんなに大きいものに、ものすごい小さな装飾がびっしりとついている。
僕が入り口で、呆けているあいだに、フィリアは玉座に向かっていた。玉座には、巨人のような大きい人物が座っている。
「父上、話がある」
「……そやつか」
まるで熊の唸り声のような低い声にびくりと体を震わせる。フィリアのお父さん怖すぎるよ。
「き、桐原ゆうきです」
「貴様!礼儀も知らんのか!!」
「ひぃっ……」
怒鳴り声に腰が抜けてへたりこんだ。これは話どころではない。今すぐにでもさっきの部屋に帰りたい。
「あ、父上……すまんのじゃ、こやつはどうやら異世界人らしくての、作法などには目をつむってくれんか」
「……ふん」
どかっと玉座に座り直すと、腕を組んでため息を、ついた。
「ユーキと言ったか、とりあえず話を聞こう」
へたりこんだ僕をフィリアが助け起こしながら、フィリアのお父さん、つまりこの国の王様の前にたった。
この国の平均身長は高いと聞いていたのは本当のようだ。王様のからだは大きく、三メートルはありそうだ。ライオンのたてがみを思わせる金髪のオールバックで、碧眼だ。赤い上下の貴族服に、白いマントまでつけている。
そこで、知らないうちにここへ来たこと。自分の知っている常識とは違う場所だということ。フィリアによれば異世界だということをめちゃくちゃびびりながら必死に説明した。
「奇妙な格好をしているとはいえ、……とても信じられんな」
「ユーキ、あれをみせるのじゃ」
「あれ?」
「ガクセイショーとかいう媒体じゃ」
言われてポケットから取り出すと、フィリアはすかさず取り上げて王様の目の前に突きつけた。
「ヌッ!」
王様の目がクワッと広がり、やがて深く頷く。
「なるほど……しかしこれは……」
「父上、さきに言っておくが、ユーキを戦争の道具にするのだけは許さんぞ」
フィリアが僕をかばうように前に出る。心臓がトクンと跳ねた気がした。どうしてフィリアはこんなに僕にやさしくしてくれるのだろう。
王様はフィリアの言葉に難しい顔をしていた。しかし、
「わかった。しばらくは様子を見よう、その間はフィリア、お前が責任を持て」
「ありがとう父上」
「……あ、あの」
話がついて、一段落したので僕は気になっていたことをくちにした。
「あ、あの!……お名前をお伺いしてもよろしいで……すか?」
「「あ」」
どうやら名乗り忘れは親譲りだったらしい。二人は笑い声を上げたあとに改めて紹介してくれた。
王様の名前は、ライオット=ジャネス。フィリアもフィリア=ジャネスというらしい。
ちなみに姓がジャネスで名がフィリアだそうだ。
ということは
「僕の場合はユーキ=キリハラですね」
「そうじゃな、よろしくなユーキ」
その後、寝泊まりする場所として、部屋を一つ貸してもらうことになった。フィリアの私室のすぐそばで良かった。
案内された頃には日が落ちきっていたので、今日はそのまま寝ることにした。
フィリアにおやすみの挨拶をしてベッドにはいる。
フィリアは、挨拶のあとに僕の頭を撫でてから部屋の明かりを消して、静かに出ていった。
すると、眠気が押し寄せて、あっという間に意識がなくなった。
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