20160501 とある部族の反乱
アメリカは、その大規模な攻撃に震撼した。非常事態宣言が発令され、軍の召集までが命じられた。
場所は、アメリカ中北部。北端はカナダとの国境を越える大森林だ(現実でもそのような森林があるのかは、私は知らない。恐らくは穀倉地帯の中に工業都市が点在する感じだろう)。この森林を保護区とするアメリカインディアンの大部族が、突如周囲の都市に『侵攻』し始めたのだ。
この事件は、日本のニュースでも恐らくは大きく取り上げられた。流石にかの同時多発テロと比べれば一段扱いが劣るものの、劣り方が一段で済んでいるというのは、考えれば恐るべき事だ。
NHKのアナウンサーによると、彼らの行為にはアメリカ政府のみならず、各国が重大な懸念を示し非難の声明を発表したとの事だった。「これは人類に対する重大な挑戦である(フランス)」といった具合にだ。
が、何よりその報道が異様であったのは、このアナフィラキシーショック並に宗教アレルギーの強い日本において、様々な宗教筋の指導者の声明が並んでいた事だった。実はこの戦い、ある種の宗教戦争だったのである。
彼らの思想は、『開かれた宗教』と私の夢の中で分類されていたものだった。定義は私自身も判然としないが、信者を教義で縛って纏め上げるのが『閉じた宗教』で、正しき心に従って生きれば自ずと教義に従っていると考えるのが『開かれた宗教』であるようだ。カトリックとプロテスタントがの関係にも似ているが、彼らが『閉じた宗教』に支配された邪悪な存在として攻撃するアメリカがプロテスタント国家である事を考えると、プロテスタントですらも『開かれた宗教』とは言い難いのだろう。
無論、彼らの攻撃の対象となった『閉じた宗教』の各宗派は、侵攻者達の行為こそ誤りであり、全ての宗教への挑戦であると見なす事となった。そればかりか、1970年代のヒッピー時代に力をつけた、間違いなく『開かれた宗教』に含まれる新興宗教の代表らも、彼らが『開かれた宗教』の代弁者となる事に、当然ながら重大な懸念を表明した。
昨今の世界的宗教戦争は、ここに新たなる局面を迎え始めた。我々人類の行く末が如何なるものになるのかは、文字通り、神のみぞ知るであろう。
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