no.12 ジョアシャン『無限生成』

 無人島で遭難して14日がたつ。ジョアシャンは運が悪かった。あの時、旅に出ようと考えなければ。乗っていた船が難破して、生きてこの島にたどり着けたのは彼ひとりだった。

 幸いにして島には真水があり、木々があり、虫がいて、果物があり……森に棲む獣から身を隠しつつジョアシャンは今日までやりすごしてきた。


 そしてジョアシャンは洞窟で、とうとう人と会うことができた! 正確には、人だったもの。座った姿の白骨死体と、その前に突き立てられた剣。ジョアシャンは喜んで剣を拝借した。これで獣に太刀打ちできる!

 それからのジョアシャンの生活は少しだけ充実したものとなった。獣を狩り、肉を得られるようになったから。


 しかし快適な無人島生活は続かなかった。ジョアシャンは病に罹ったのだ。吐き出し、出血し、それでも剣を片手に獣を退け、いつかの洞窟にやってきた。この剣を手に入れた場所。

 白骨はいなくなっていた。風化するほど時が過ぎたのだろうか?


 今日まで生きながらえたことを感謝して、ジョアシャンは座り込むと眠りについた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 ……無人島で遭難して14日がたつ。ジョアシャンは運が悪かった。あの時、恋人を追おうと考えなければ。乗っていた船が難破して、生きてこの島にたどり着けたのは彼ひとりだった。

 幸いにして島には真水があり、木々があり、虫がいて、果物があり……森に棲む獣から身を隠しつつジョアシャンは今日までやりすごしてきた。


 そしてジョアシャンは洞窟で、とうとう人と会うことができた! 正確には、人だったもの。座った姿の白骨死体と、その前に突き立てられた剣。ジョアシャンは喜んで剣を拝借した。これで獣に太刀打ちできる!

 それからのジョアシャンの生活は少しだけ充実したものとなった。獣を狩り、肉を得られるようになったから。


 しかし快適な無人島生活は続かなかった。ジョアシャンは判断を誤り、獣の返り討ちにあったのだ。右腕を奪われ、血を流しながらも逃げ果せたのはいつかの洞窟だった。この剣を手に入れた場所。

 白骨はいなくなっていた。風化するほど時が過ぎたのだろうか?


 ジョアシャンは座り込む。血が流れ続け、やがて力尽きた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 ……無人島で遭難して14日がたつ。ジョアシャンは運が悪かった。あの時、列車に乗ることを選んでいれば。乗っていた船が難破して、生きてこの島にたどり着けたのは彼ひとりだった。

 幸いにして島には真水があり、木々があり、虫がいて、果物があり……森に棲む獣から身を隠しつつジョアシャンは今日までやりすごしてきた。


 そしてジョアシャンは洞窟で、とうとう人と会うことができた! 正確には、人だったもの。座った姿の白骨死体と、その前に突き立てられた剣。ジョアシャンは喜んで剣を拝借した。これで獣に太刀打ちできる!

 嬉々として洞窟を出たジョアシャンは、周りに美しい花が咲いていることに気がついた。剣のお礼にあの死体を弔ってやろう。ジョアシャンは花を摘むと洞窟に引き返す。そこでジョアシャンは出会ってしまった。


 黒髪の女が、白骨死体を抱えていたのだ。今度こそ生きている人だった。

「あー」

 女は短く落胆の声を吐く。

「戻ってくるのが早過ぎる」


 黒髪の女は呆然としているジョアシャンから剣を奪い取ると、そのまま彼の胸を突いた。白骨があった場所に死体を引きずり座らせる。そしてジョアシャンだったものの前に剣を突き立てた。女は白骨死体を抱えなおすと、そのまま闇間に消えてゆく。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 ……無人島で遭難して14日がたつ。ジョアシャンは運が悪かった。あの時、父親についていくと決めなければ……。

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