no.08 グレゴリールーム

 煙をくゆらせながら灰髪の男は扉を眺めている。手は大きいが骨のよう、体躯は細く枯れ木のよう。


 扉の向こうから、がりがりという音が、途切れながらも長く、長く……。彼女は手こずっているようだが男が手伝うことは無い。男は白衣を羽織りなおすと、白い壁に背を預け目を閉じた。ごりごり、がりがり。音は続く。


◆ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◇


 がん、がん、怒りをぶつける鈍い音が部屋中に響く。がりがり、ごりごりと、今度は何かを削り潰す音。部屋には彼女ひとり。がりがり、ごりごり。いや、部屋にはがふたり。がりがり、ごりごり。


 怨嗟、嗚咽、憎悪、悔悟。

 ほんとうは、もっといっぱい。


 削り潰す音はいつまでも続く。

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