no.05 おかあさん『幸福の1日』

 『貴族種』はみな鳥仮面と黒のコートを身につけていた。彼らは月に1度だけ『財産種』の人間を着飾って、自慢しあうことが趣味だった。この時だけは食べ物も、とりわけ質の良いものを与える。おなかがいっぱいになるまで与え続ける。急いで血色を整えて、体を膨らませツヤツヤさせる。香草をすりつけにおいをよくし、関節部分には紅を入れた。中でも彼らのお気に入りは、唯一といえる『母種』と『子種』のふたりだった。


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 『子種』たる女は『母種』と共に、普段はけっして身につけない、白くて豪奢な服を着せられていた。それはひと月前に無理やり観せられた歌劇の登場人物に似た格好だった。『貴族種』達は手を叩いて称賛する。『母種』は照れていたが、女はずっと不機嫌だった。この愚かな鑑賞会が終われば、いつものみすぼらしい身分に戻るのに。

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