no.04 エッタ『守護神』

 今日ばかりは、さすがのエッタも死んでしまうと覚悟した。しかし改造型ライオンがエッタを食い殺そうとした瞬間に聞こえたパアン!という乾いた音、ライオンは倒れて死んだ。突然現れた"黒髪の女"が不思議な力で守ってくれたことは、エッタにもすぐ分かった。


 エッタが「ありがとう」と言っても女は反応しない。言葉が通じないのだろうか?

 その場を去ろうとしたが女も付いてくる。「これから母さんに会いにいくんだ」そう言った瞬間、女はまた不思議な力を使った。パアン!パアン!音にあわせて、狂化型オオワシや陸上型クジラが倒れていく。


 ひょっとしたらこの女はエッタを守るために現れた天上型アンヘルなのかもしれない。エッタの日頃の行いが、天上型セクセタに認められたのだろう。エッタは誇らしげに、女を伴いながら荒れ蒼森を進む。

「ああ、母さんはなんて危険な所に住んでいるのだろう!」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 言葉はまるで分からなかったが、なぜか『母』という単語だけは理解できた。彼が食われては元も子もない、しかし大獣に有用な手段が他にない。黒髪の女は舌打ち混じりに銃弾を放ち、大獣の亡骸の山を築いた。かくして目的は果たされて、少年は母に会えて満足そうな顔。それを眺める彼女は「もう満足しただろう」と彼に通じない言葉で呟いた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 少年は「帰り道もよろしく、セクセタの慈悲よ」と黒髪の女を振り返ったが、それよりもはやく金槌が振り下ろされた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る