瑞羽大樹沖海戦
第9話
願ったのなら叶えてしまえとあの人は言った。
そう言い残していなくなった。
私には耐えられない。
皆を犠牲にして自分だけなんて。
だからこうなった、かなぐり捨てて逃げてしまった。
もう戻る事はできない。
すべてを無意味にしてしまったから。
私はもう望まない。
望む事は許されない。
もう二度と
「んぎゃう!!」
これで5日連続、スズはベッドから落ちることで目を覚ました。
「またこの方法に頼ってしまいました……」
現在時刻午前7時0分40秒、もうちょっと粘ってくれとは思う。中二階に設置されたベッドふたつ、その間を通ってエプロン着用のアリシアがカーテンを開けた。枝の端っこの過疎地である、見渡す限りの海海海。
「起きてくださいスズ、今日で最終日です」
「もう起きてるよ……」
黒のタンクトップとブラウンのショートパンツ、頭をかきながら立ち上がった。いつもの服ーとクローゼットに向かったが、壁に
「フレークでいいんだけどな……」
「医療支援ユニットとしてはあのドッグフードみたいなのを常食とするのは許せませんので」
「ド…………」
付近に住む若者の何割かは敵に回したな、とか思いながら着席、味噌汁をずずずと言わせながらアリシアを見る。型式番号XHBD-2、昔の軍隊が作ったからくり人形のうち衛生兵モデルの試作型だと言っていた。では実際はと言うと、ちょっと前までやっていたのは農薬開発、そして今やっているのは家政婦のそれである。確かに左腕にはレーザーガンとかいうのが常装されており、ライフルを持たせてシューティングレンジに立たせた日には今後一切更新される事のないだろうスコアを叩き出してしまうのだが、それにしたって万能すぎるんじゃないか。なんて本人に言うと、お前らがプリセット機能以上の事を求めてくるからだ、とか。
しかし衛生兵、白くて長い髪、身長146センチ、それに見合う体格。
「……アリシアの製作者はロリコンさんだったのかな?」
「質問の意味がわかりかねます」
フライパンを洗い終え洗濯機の方へ向かったアリシアから目を離し、葉っぱだらけの朝食を一気に片付ける。強制起床機能付きの目覚まし時計があるおかげで時間には余裕があるが、それにつけても袴は着るのに手間がかかる。
味?適当に体を壊して入院してこい、同じのが食えるから。
「スズ」
「うん?」
「魔法陣から何か湧いています」
「ただのエクトプラズム」
「エクトプラズムを垂れ流す民家って普通なのですか?」
普通、ではないな、うん。やっぱりアレは一度消そう。
「それからスズ」
「うん?」
「洗濯物が紙まみれに」
「……あ…」
符だ
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