けまタン@下手くそな物書き

 

 あるところに、人生に悲観し、嘆いている男がいた。男は町の大きな公園のベンチに座り、一人ぼんやりと考え事をしていた。そこに一人の男が現れ、

突然私に話しかけてきた。

「今すぐ山に登れといわれたらどの山に登る」と

 俺は返答に困った。山に登るといった行為自体が俺の中に存在しない訳ではない。只、その問いに答える気力すらなかったのである。

「わかりません。あなたならどうなんですか」それがやっとの思いでひねりだした返答である。

 その男は得意げな顔して話し始めた。

「俺が今すぐ登れといわれたらどんな山に登ると思う。富士山のようなその国を代表する山か。はたまた、エレベストのような世界最高峰の山か。まずそのどれでもない。俺が登る山はこんな山だ。まず、ふもとに小さな集落がある。都会ほどではないが田舎というにはにぎやか過ぎる集落だ。そこにはいろんな人間が住んでいる。そこでは山の情報から些細な日常会話までいろんなことが聞ける。そこから山に入るんだ。まず目の前に現れるのは、きれいな高原だ。都会暮らしの人間が避暑を楽しむために来そうなさわやかな高原だ。気を許すとずっと目的を忘れてずっと滞在しそうになっちまう。それだけ居心地が言い。だが、平和な風景はそこまでだ。そこを抜けると森に入る。そこにすむ動物達は、自分のテリトリーを争っている。熊のような猛獣からリスみたいな小動物までな。テリトリーに入るものならなんだって攻撃する。その上そのテリトリーを広げようとしているのさ。それを越えたら地面がむき出しのところに出る。そこには草木は一切生えない不毛の地だ。さらに登るとこ凍えるような寒さが襲ってくる。何人も近づけさせないが如くに、な。そしてだ。そこを登っていくと工具なしには登れないほどの断崖が現れる。頂上は目視すらままならない。そこを登っていると本当に頂上があるものかとすら思えてくる。しかしだ、もう戻ることはできない。ただがむしゃらに登っていくしかないんだ。そいてだ。突然視界が開け、空に何もないところに行き着く。そこで初めて自分が来た道を振り返るのだ。町の灯り、森、川、谷、全てな。しかし、そこに小さな点々を見つける。よく見るとそれは人間だ。自分以外にもその山に登ろうとしているやつがたくさんいるんだ。様々な障害を乗り越えて目的のために進んでいく。その山こそ人生そのもなのさ。」

 男はそういうと姿を消した。最後に一言を残して。

「お前はまだ高原で休んでるだけ。さっさと次の一歩を踏みなさい」

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