第37話 愛される悪魔 その3


メガロは城に乗り込もうとしていたところをミリアに止められた。

ミリアはメガロにしがみついて必死に止めた。


ミリア「メガロ、私もキロのことを失いたくない、けどね、あなたも失いたくない」

メガロ「助けなきゃ、あいつは殺されちまうんだぞ」

ミリア「もし、妃にたてついたら、あなたは確実に殺されてしまう、キロよりも私はあなたが大事だ。恨むなら私を恨めばいい。私がキロを見捨てるんだから」




いつも死と隣り合わせに戦ってきた

余命1年もないと宣告された

つい最近致命傷を負って死にかけた。

それでもまだ死というものについて認識していなかったのかもしれない。




明日、処刑される・・・




使い魔「きっと、ご主人様が助けに来てくれますよ」

キロは希望を込めて使い魔を見た。

使い魔「きっと・・・多分」




キロは眠ることができなかった。

今更だとわかっているのに、たくさんの後悔が湧き出てきた。

自分の人生なんて価値がないと思っていても

死に対する恐怖は消えなかった。




次の日の朝、

やはり、これは、ただの悪夢なんじゃないか?

と自分をごまかしたけれど

処刑場に連行されて、

あのギロチン台を見て、夢ではないと悟った。




処刑場では、皇太子と妃が高い位置で見物していた。

そば使えの兵士が白い剣を大事そうに持っていた。




兵士「皇太子と妃自ら来られずとも・・・」

皇太子「妻がどうしてもというので」

コスカ様「この目でしっかりと、あの犯罪者の死を確認しませんと夜も眠れないので」

皇太子「ああ、これで妻の安全は保障される・・」




兵士長「これより、罪人キロ=エバンスの刑の執行を執り行う。」

兵士長は動揺しながらも毅然に振舞っていた。




キロはギロチン台につながれた。

死ぬ、死ぬ、死ぬ、

キロは絶望で叫びたくなったが、叫ぶ声が出なかった。


コスカ様「あなたの頼みの綱の白い剣はここにあるわ。この剣を眺めながら短い人生にお別れしなさい。私からのせめてもの計らいよ。」





兵士長「最後に言い残したいことは?」

キロ「・・・・」



ああ、本当にこれで最後なんだ。

せめて、いままで迷惑をかけたひとに謝りたかった


キロ「・・・もし、・・・まだ、・・・生きることができるのなら、いままで迷惑をかけたひとに謝りたかった。」




兵士長「やれ!!」

ガラガラという音とともにキロの首は胴体から離れた。




・・・・



兵士長は耐え切れず、涙を流した。

コスカ様(あっけない。11匹の悪魔を退治したと聞いたからどんな強者かと思えば・・・)



誰も入れないはずの処刑場に

ひとりの少女が入ってきて、キロの死体に駆け寄った。

銀髪の少女だ。




兵士「誰だ、こんな娘を処刑場に入れたのは」




天使「・・・首をこんなにしちゃって、しょうがないわね」

天使はキロの首を持ち上げて胴の部分まで持ってきた。

そして、キロの首の部分を両手でつかんだ。

天使「私の能力は、指定した範囲の時間を巻き戻す・・・・・」


黒く光った両手から周りに飛び散ったキロの血液が首に戻っていく。

そしてキロの首は何事もなかったかのように元に戻った。



キロ「・・・ここは・・・」

キロは意識を取り戻した。



コスカ様「・・・なん・・・ですって」

周りの兵士はあまりの奇怪なできごとに理解が追い付かず震え上がった。

兵士「ば、化け物だ!!!」




コスカ様「・・・お前は・・・見覚えがあるわ・・・まさか・・・100年前、私を白い剣で刺した、デシベル王直属騎士団のアーシェ=グラフェンなの?」



天使「・・・・お久しぶりね、コスカお嬢様」



コスカ様「お前は、100年前の人間・・・なぜ、生きているの?

・・・お前は・・・お前は・・・その魔力・・・まさかお前は悪魔なのね?

ははは、悪魔討伐隊のお前が悪魔になるとはとんだお笑い草ね。

ははは、ああ、そうだ。お前の大切な父親は、お前の死を悼んで、死んだそうね?」



父親の話題が出た瞬間アーシェの顔つきが変わった。

コスカ様「ひっ!!」

その様子にコスカは狼狽えた。



キロはぼんやりとふたりのやり取りを聞いていた。

天使「キロ、あとはお願いね。」




キロは言われるままに

皇太子とコスカ姫の座る檀上にのぼり、狼狽えた兵士から白い剣を奪ってコスカ様の方へゆっくりと歩いた。

コスカ様「ひいいいいい、やめて、お願い。」

皇太子「やめろ!」

皇太子が自ら剣を抜いたがキロは抜ききる前に当身で気絶させた。




腰が抜けたのかコスカは情けなく、這いずっている。

コスカ「やめて、お願い、私は愛されたいの、あなたは私のことが嫌いなの?」


キロ「・・・あなたのことは・・・嫌いじゃなかったですよ・・・どこか自分とそっくりで・・・」



キロはためらいなく剣を振りおろし、傷口から溢れ出た魔力が白い剣を通してキロの体内にすべて吸収されていった。

もうキロは魔力を吸収することに心臓の痛みすら感じなくなった。

もうキロの体は魔力を限界まで吸い込んでいた。

そして、そのまま気を失った。

魔力をすべて放出したコスカは綺麗な洋人形に姿を変えた。



兵士長「・・・キロなんてことを」

兵士「皇太子と妃が襲われた。誰か!誰か!犯人を捕縛しろ。」




兵士たちが駆け付けたとき、檀上には、洋人形と気絶した皇太子しかいなかった。





天使は気絶したキロを背負って運んでいた。

「キロ、どれだけ感謝してもし足りないわ。これで私の悲願が叶う。あなたの命は必ず助けてあげる。」

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