第33話 殺戮悪魔 その2


天使はキロについて考えていた。



彼の心臓にはたくさんの魔力が蓄積されている。

10匹の悪魔の魔力・・・

でも、まだ足りない。

あと2匹分の魔力を確保しておきたい。

絶対に失敗しないために



キロはこう言った。

「殺したいわけじゃない。もうあんたの目的について聞くつもりもない。俺はただ悪魔を退治するだけだ。」




私は本当のことを話せない、話したらきっと彼は悪魔退治を止めようとするだろうから・・・

あのとき、私に危害を加えようとしたら、私は容赦なく彼を・・・

私は・・・本当に・・・悪魔だ。






キロは荒野の木陰で休んでいた。

顔は真っ青で今にも死にそうなうつろな目をしていた。



使い魔「本当にこのまま死んでもいいんですか?」

キロ「最近、自分の命にそこまで執着する必要がないかなって思うようになったんだ。俺が死んでも、誰も困らない。生きる価値がないって」

使い魔「・・・そんなことないですよ。」


キロ「すごい棒読みだな。」


キロ「・・・それに・・・もうすでに生きてる心地がしない。」

使い魔「・・・そうですか」






国境近く

この辺りは様々な民族が入り組み

争いの絶えない地域

常に血生臭い争いが起こり血が流れていた。




たくさんの屍を踏みつけて、叫ぶ少年がひとり・・

「ひゃはははははははは!!!!!・・・てめえらにゃ、生きる価値ねぇ・・・」







ロズワード近くの町の掲示板より



【ロズワードテロ事件収束へ】

覇王と名乗るテログループがロズワード市街を占拠した事件であるが

リーダーである男が死亡したことから

グループは離散し、ローズワード軍が一斉に検挙し、身柄を拘束した。

市街は解放され、近日中にも一般市民への開放を認める方向へ向かっている。




【ロズワード近郊のスラム街で大量の行方不明者発見】

先ごろ、多発していた大量失踪事件であるが、

その行方不明者の多くがロズワード近郊のスラム街で発見された。

記憶が混乱している者も多く

当局は事件の解明に全力を尽くしている。




【ジーメス村を中心にで大量の紙幣が紛失】

ジーメス村を中心に一度に大量の紙幣が紛失するというきわめて不可思議な事件が起こっている。

紙幣は厳重に金庫に保管されていたものでさえ紛失していることから盗難等によるものではないとみられる。

特にジーメス村在住のケインズ氏と取引のあった企業の紛失が目立つことから

当局は事件とケインズ氏の関連を調べている。

ケインズ氏は先ごろ、屋敷等の財産を残しながら失踪している。




【国境沿いに謎の獣が出没】

国境沿いに謎の獣が出没し、国境警備部隊など犠牲者は多数に上っている。

隣国の新兵器との噂も出ている。

国家は国境警備部隊の撤退を決定。

国境の警備を手薄にするなど国家の安全にかかわると多数の非難が寄せられている。




不可解な事件の続報はここに書かれている通りであった。本来ならばカルデラ城の中央政府に報告して対応を仰ぐべきであるが、ここ数か月は政治機能がストップしたままであった。





たくさんの人々が避難するために国境近くから離れている。

国境警備の兵隊でさえ

「本当に恐ろしい怪物だった・・・」

たくさんの人々は恐怖に身震いしていた。

ためらいなく人を殺し、屍の山で高笑う少年・・・




その中で、人の波のに逆行して国境近くへ向かうキロはさぞかし狂った行動に見えた。

兵士「君!!そっちに行ってはダメだ。死ぬぞ。」




呼び止めた兵士はぼんやりと顔を上げたキロの顔を見て絶句した。

兵士「・・・」




キロは軽く一礼してその場を後にした。




兵士「先輩、どうしたんです。早くあの一般人を止めないと」

兵士「・・・・ああ、いや、あの青年の生気のない顔をみてぞっとしてしまってな。きっとあの青年は死にに行くんだろう。可哀そうにきっとこの世に絶望してしまったんだな。」






この世に地獄があるならば、きっとこんな場所なのだろう。

行く道にたくさんの死体が転がっている。




使い魔の持つ悪魔の本が近くにいる悪魔を探知した。



【殺戮悪魔】

適者生存を謳う悪魔

たくさんの人をただ殺す

少年のような形相




キロの目の前に屍の山に立つ少年が高笑いしていた。

「ひゃははははははっは!!!」

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