第30話 劇場悪魔 その2



天使は考える。




私はあの人にひどいことをしている・・・




悪魔と戦って無事でいられる保証はない。大けがをするかもしれないし、最悪殺される。そして、悪魔退治に成功しても白い剣を使った代償で長くは生きられない。1年かもっと短い期間しか生きることができなくなる。



つまり、失敗しても成功しても死ぬ。

それが悪魔を退治するということ




それでも、私は止まれない。果たさなければならない目的があるから・・・



$$$$




「はじめまして、私はパイロンと申します。あなたたちの呼ぶところの”劇場悪魔”です。」




劇場悪魔がキロの前に颯爽と現れた。

キロ「・・・最近、向こうから挨拶しにくる悪魔が増えたなぁ・・・」

使い魔「いやー私達、有名になったんですかねー」




パイロン「あなたを救ってあげましょうか?」



白い剣を構えたキロは足を止めた。



パイロン「人の人生の物語を娯楽とする私にとってアナタは実に興味深い存在だ。」




パイロン「私はたくさんの能力を保持しています。すべては人の人生をより素晴らしい作品に仕上げるための道具でしかありません。その中に”人の心を読み取る”というとても便利な能力がございます。」




使い魔「キロさん。耳を貸す必要なんてありませんよ。」

キロは動かず聴き続けた。




パイロン「100年前わたしは白い剣を持つ騎士に打倒され、魔女モールスに封印された。100年前私は彼女の心を読んだことがある。彼女が作製した白い剣についての重要な情報を知ることができました。」




キロは動かない。




パイロン「白い剣とは、剣で傷をつけた悪魔の傷口から魔力を吸い取る剣です。そしてその吸い取られた魔力はどこにいくのか?それはあなたのここですよ。」



キロ「心臓・・・」


パイロン「あなたのそこに特殊な力で蓄積されていきます。魔力漬けにされた使用者の心臓は弱り通常1年ももたずに死にいたる・・・これが白い剣の正体です。」



キロ「・・・つまり、俺の寿命は、1年もない・・・」

キロの膝は震えてしまった。

内心はそう感じていたけれどはっきりと指摘されて狼狽している。



使い魔「キロさん、悪魔の戯言に耳を貸さないでください!」

パイロン「あなたも使い魔とはいえ悪魔でしょうが・・・私は人間だけでなく、弱い使い魔ぐらいの思考を読むことも造作もないんですよ。あなたは、その人間に大きな隠し事をしている。」



使い魔「な・・・ないですよ?隠し事なんて」

使い魔は滝のように汗をかいている。




パイロン「キロさん・・・あなたは、泥棒に倒されて、仕事を首になりましたね?その泥棒の正体はあなたの身近な人物のようですよ?」


使い魔「やめてください。」



パイロン「泥棒の正体は、あなたたちが天使と呼ぶ人物の仕業ですよ。そして、盗んだ宝こそ、あなたの今手に持っている白い剣そのもの。あなたはあなたを貶めた張本人に協力してさらに殺されかけているのですよ・・・」




キロはその場に倒れこみそうになるのを必死にこらえた。




パイロン「あなたが助かる道はただひとつ・・・天使と名乗る少女を殺しなさい。」

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