第16話 生と死を入れ替える悪魔 その2
霧が深くなってきた。
キロと使い魔はひたすらに天使の指す方向に進んでいた。
キロ「悪魔を倒したら、おばあさん、生き返るかな?」
使い魔「生き返らせたいんですか?会って間もない人間、自分とさして関わりのない人間ですよ?」
キロ「嫌な言い方だな・・・人間だったら、誰だって人が死ぬのは嫌なんだよ。まあ、悪魔のあんたには分からないかもしれないけど」
使い魔「・・・そうですね。わかりません。」
キロ「飯をごちそうになったからな。一食一飯の恩義ってやつさ。」
使い魔(ご飯くれたら、なんでもいいんですね)
霧がどんどん深くなってあたりは真っ白であった。
使い魔「!キロさ・・・」
キロ「・・・・使い魔?」
一瞬目を離した隙に使い魔がいなくなってしまった。
キロ(はぐれたかな?)
剣を手放しては駄目という天使の言葉を信じ、剣をしっかり握りながら進んだ。
キロ(悪魔の本拠地、悪魔の本拠地・・・)
「あら、めずらしい。こんなところに旅人さんが・・・」
キロ「!?」
霧が晴れてきて、広い場所にでたところで人に出会った。
見たところ30歳くらいの教会のシスターさんのようだった。
「ふふ、それにしても、すごい汗ですね。まるで、今から戦場に赴く兵士のような・・・」
キロ「・・・・え、えっと、こ、これは、なんというか・・・」
急に自分がとてもおかしなことをしていたような気がして、恥ずかしさのあまりキロはしどろもどろになった。
シスターさん「道に迷われたとか?」
キロ「あーそう、そうなんです。もう人生という迷路に迷いこんでしまって、ははは」
シスターさん「それは御可哀想にお疲れでしょう。村はすぐそこです。休んでいかれては?」
キロ「え、いいんですか、有難うございます。」
キロ(いい人だな。なんて親切なんだろう。どこかの悪魔とか天使とは大違いだ。)
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シスターさん「おおっと」
うっかり谷川へ落ちそうになったシスターさんをキロは支えた。
キロ「大丈夫ですか?」
シスターさん「ええ、有難うございます。わたくしは、小さいころから、運動神経が乏しいというか、どうも抜けているところがありまして」
キロ「あははは」
シスター「いつも失敗ばかりでやっかまれていたのです。たまたま流れ着いたこの地の人々には本当によくしていただいて・・・」
キロ(失敗ばかりでやっかまれ・・・)
キロの心にそのセリフがチクチク刺さった。
シスターさん「ここがグラナ火山のふもとの里です。」
おじいさん「おお、シスター、あなたにいただいた薬のおかげですっかり腰が良くなったよ」
シスター「いえいえ、当然のことをしたまでです。」
おばあさん「また、ひとりで薬草なんぞを摘みにいって、お前さんは危なっかしいからの」
シスター「ご心配、いただいてありがとうございます。」
若者「シスターお帰りなさい、ちょ、その隣の方は・・・」
シスター「道に迷われていたので、お連れしました。」
若者「んだよ、お前焼いてんのか?」
若者「馬鹿、ちげぇよ!!」
村の外れに教会が建っていた。
子供「シスター!!!」
何人かの子供が一斉に飛び出してきた。
キロ「子供?」
シスター「身寄りのない子を預かっています。みんな良い子たちですよ。」
子供達「その人は?」
シスター「道に迷われていた方です。みなさん良くしてあげてくださいね。」
子供「なんか、この人幸薄そう・・・」
シスター「初対面の方に対してそんなことをいってはいけませんよ」
子供達「はーい」
キロ(・・・・・・・)
それから数日、キロは教会にお世話になって過ごした。
この村の人々は本当に良い人ばかりだった。
天使の忠告通り、キロは寝るときでさえ、剣を肌身離さず持ち歩いた。
それを見て子供たちは大いにいぶかしがった。
子供「どうして、ずっと、剣を持ち歩いているの?重くないの?」
シスターさん「人にはいろいろ事情があるのです。深く追求してはいけません。・・・きっと戦争や戦乱を経験してこんなことに」
キロ(・・・・・・)
村の周りの木々や建物には焦げて炭になっているものが多数あった。
ここはグラナ火山のふもと
最近火山が噴火した場所のはずなのにどうしてこんなに平穏なのか?
生と死を入れ替える悪魔が命を奪ったりしなかたんだろうか?
キロ「あの!最近、火山が噴火したんですよね!!」
おじいさん「あー、大昔にはそんなこともあったかのー」
キロ「・・・・・・」
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