第12話 影の薄い悪魔 その1
「だから、わたしは、この会社の係長なんだ!!信じてくれ!!」
秘書「はぁ・・・まあ、新人は倉庫整理から始めてください。連れて行きなさい!!」
強面の男達に連れて行かれる自称係長・・・
貿易都市は、
この地方の交易の中心あり、あらゆる物産が集まる物流の交差点である。
巨大な船と巨大な建物が立ち並び、たくさんのひとで埋め尽くされていた。
その貿易都市でトップに君臨する貿易会社
その名も「鯨の王様(ホエールキング)」といった。
キロと使い魔は貿易都市にやってきた。キロはすぐに職業紹介所へ足を運んでひとつの張り紙に食いついた。
【社員募集:鯨の王様(ホエールキング)】
キロ「・・・これだ」
使い魔「悪魔退治はどうするんですか・・」
キロ「え?何か言った?」
今は人手が足りないらしく、申し込んだらすぐに面接に呼ばれた。
面接中・・・
キロ「い・・・い・・・以前は、悪魔を退治していました。」
秘書「はは、面白いですね。」
キロ(目が・・・笑ってない・・・)
$$$
「わが社は、生まれや生い立ちなどでは差別いたしません。誰でも入社していただけます。」
秘書がメガネを2回くいくいと上げた。
(遠回しにさっきの面接不合格レベルだったって言われているように感じるな)
「では、わたしについて来てください。」
綺麗なオフィスの更に下の
みすぼらしいオフィスの更に下の
倉庫・・・
キロ「え・・・ここ?」
秘書「ええ、新人は必ずここから業務をスタートします。」
社長
↑
役員
↑
部長
↑
課長
↑
係長
↑
一般社員
↑
一般運送員
↑
倉庫整理
秘書「とわが社の構造はこのように構成されております。出世は、年1回、上の身分の方の推薦と試験の結果で決まります。」
「こら、きりきり働け!!」
「ひいい」
キロ「・・・なんかムチ打ってるひとがいるんですが・・・」
秘書「気のせいでしょう・・・ではこれにて」
秘書はそそくさと上に登って行ってしまった。
本当に気の遠くなるような広い倉庫でたくさんのひとが荷物を運んでいる・・
「こら、きりきり働け!!」
キロ「ひいい」
$$$$
「おや、君、新人さんだね。最近、新しく入ってくる新人が多いよねぇ」
キロ「そうなんですか?」
「ほら、あそこにいる人とか」
指差した先にはひげ面の中年男がひとり
「わたしは、新人ではない!!!係長だ!!」
キロが見たその人は、影が薄いというか、印象に残りにくい感じがした。
「係長になるのが目標なんですね。」
「違う、係長だったのだ!!ある日突然、誰からも存在を忘れられて・・・」
キロ「あはは、そのギャグ面白ーーい」
「ギャグじゃねーよ!!」
キロ(あれ?どう返すべきだったんだ??)
「休憩終了!!!!さぁキリキリ働け!!!!」
重労働の忙しさから係長だったという彼の存在さえも心に残らなかった。
この倉庫だけでも無数の人が働いていた。
きっと、誰かが抜けたり入ったりしても気が付かないほどに
キロはそこが少し怖くなった。
夕方・・・
「本日の仕事終了ーーー!!!」
キロが倉庫から出ようとしたとき何か巨大なものが通り過ぎるのを感じた。
目の前には、何もないのに・・・
使い魔「キロさん!!悪魔の反応が」
【影の薄い悪魔】
人の存在を糧にする
立場や人間関係を食らう
大きなトカゲのような姿
「あーあー聞こえない聞こえない」
ツカツカツカツカ・・・
キロは無視して通り過ぎた。
宿舎に戻るとぐったりと横になった
(あーやっぱりこういう仕事はつらいなぁ・・・)
使い魔「キロさんキロさん悪魔ですよ悪魔ですよ」
使い魔がキロの頭をべしべし叩いた。
キロ「痛い痛い痛い」
そのころ
ホエールキング役員会議では、
社員「今年度の業績は軒並み下方修正であり、大変苦しく・・・」
社員「あの・・・一部の意見ですが、役員の方々の給与を減らしてはどうかと・・・」
「とんでもない」
「何を言っておるのだね」
「君・・・暖かいところは好きかね?」
社員「すいません。すいません。出過ぎたことを」
社長「・・・・やはり、下部の者の給与を減らして、人員を削減するしか・・・」
秘書「しかし、社長、今の時期は出荷の最盛期ですので・・・」
社長「ふーむ」
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