第11話 暴風悪魔 その3
キロ「よし」
キロは自分のほほをはたいて気合いを入れなおした。
(この外の世界は地獄かもしれない・・・でも、ここよりは過ごしやすい場所だってきっとあるはずだ。・・・すべては自分の利益のために)
グラスさんとカップは舟のことで大ゲンカしていた。キロはそこへ割り込んだ。
グラス「キロ君?」
カップ「兄ちゃん?」
キロ「すぐにこの島に大嵐がやってきます。そうしたら、すぐに脱出してください。最後のチャンスかもしれません。」
そういうとキロは走り出した。
無人島の中心の岩山には、草も生えない空き地が広がっていた。
キロ(これだけのスペースがあれば、たぶん大丈夫、足場があれば、戦える・・・)
島の周りの狭い範囲はわずかばかりの日がさしている。
この狭い空間は平和なんだ。そして、少し外は大嵐が取り囲んでいる。
ちょっかいを出さなければ、平和に過ごせるのに・・
大きく息を吸い込んで
キロ「暴風悪魔、こっちに来い!」
と思いっきり叫んだ。
キロ「・・・・・・・・・・」
キロ(やっぱ駄目か・・)
そのとき、キロの白い剣が白く輝きだした。そして、キロを取り巻く周囲の黒い風を吸い取り始めた。
それは悪魔の魔力を吸っていた。悪魔に傷を負わせていないのに確かに吸っている。
自らの力の源である、魔力を奪う輩を悪魔は許さない。
雲はわずかに射していた光を遮り、天井の丸い窓を覆いつくし、昼だというのに真っ暗になった、そして、雷が落ちる様に、キロの背の倍近くある大きな人面怪鳥が降り立った。
暴風悪魔は、おおよそ、この世のものとはおもえない男のような女のような声で威嚇する。
翼を動かすたび、立っていることも難しいほどの強風が吹きつける。
怪鳥の体当たりをかわす。
風に煽られた岩の破片や石のつぶてが体をかすめ、体に浅い傷をつける。
キロは、白い剣と自分の腕をロープで縛りつけ、向かって来た怪鳥の胸にめがけて飛び込んだ。
ザシュ
白い剣の刀身が悪魔にささる。怪鳥は痛みに耐えかねてその場所から飛び立った。キロは必死に怪鳥と白い剣にしがみついた。
上空、高く高く飛び立つ。雲の高さを超えて飛び上がり、最高点まで達したところで怪鳥は魔力を失い力尽きた。
薄れゆく意識の中で、キロは雲よりはるか上の景色を見た。キロのいた島は点のようだった。カルデラの国でさえ、多分ここから見たら小さい部分に過ぎないんだ。
キロは怪鳥と共に落ちていく・・・
キロ(・・・この高さじゃ・・・助からない・・・)
$$$
悪魔の搾りかすの黒い渡り鳥は、雲の子を散らすように飛んで行った。
体がゆらゆら揺れているのを感じた。
カップ「おお、兄ちゃん気が付いた!」
キロは舟に乗っていた。
キロ「あれ、どうして?」
グラスさん「あのあと、あなたのセリフに困惑していたら、大嵐が島に上陸して、なんとか舟を流されまいと往生していたら、突然嵐が止んで、使い魔さんが言うままに島の中心へ行くとあなたが倒れていたので・・・」
舟に揺られて1日で貿易都市近くの港に到着した。
グラスさん「では、わたしたちは食糧を調達したあと港町に報告に戻ります。原因不明の嵐は終結したと・・・」
カップ「なあ、兄ちゃん、使い魔が言うように本当に悪魔がいて、兄ちゃんはそれを退治したのか?」
キロ「・・・さあ、どうだろ」
グラスさん「それではここでお別れですね。またどこかで会うことがあれば・・・」
カップ「俺は将来父さんより有名な冒険家になる。兄ちゃんは俺たちに会えてラッキーだったんだぜ。」
キロ(ホント自信満々だな・・・)
使い魔「キロさんだって有名な悪魔退治の勇者として後世に語り継がれる人物になりますよ。」
キロ「・・・そこは別になりたくないから。」
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