第4話 雨女悪魔 その1


【悪魔退治について補足】

悪魔は魔力で膨らんだ風船のような状態である。白い剣で斬りつけて傷口から漏れ出した魔力を白い剣で吸収する。魔力をすべて食われれば、最後は絞りカスである弱体化した本体のみが残る。なお、白い剣以外どのような武器も本物の悪魔には通用しない。



使い魔「さあ、悪魔退治の旅へ」

キロ「・・・おお」



キロ「・・・・・・」

キロ「ちょっと待った・・・なんで俺がそんなことしなきゃならないんだよ。」

使い魔「ちっ」

キロ「今舌打ちした?」




キロ「俺だってやることがあるんだよ。就職活動とか就職活動とか」

使い魔「人間は大変ですね」





キロは西の穀倉地帯から南下していた。

この辺りは、雨の多い地域だ。

自分の背丈の何倍もある木が生い茂り『樹海』などと呼ばれていた。

安易に街道以外を通ろうとすれば森を抜けることもままならず、白骨となって発見すらされないだろう。





女性が森の前の像に祈りを捧げていた。彼女はとてもやつれているように見えた。



「どうか娘をお返しください。娘がまだ生きていますように・・・」



引き返すところでばったりと出会ってしまってバツが悪かった。


女性は雨に濡れているキロを哀れに思ってか声をかけてきた。

「こんなにも濡れて御可哀想にどうか家で休んでいってください」


奥さんの娘さんは、10日前にけんかをして家を飛び出したそうだ。何も持たずこの森に入るところを目撃されたようだった。

森を捜索したが何も手がかりが見つからなかったらしい。

女性の泣きはらした目が見るに堪えなかった。




翌日も小雨がぱらついていた。

キロと使い魔は森の前に立った。

使い魔「この辺りは有名な自殺スポットだそうで・・・」

キロ「へぇ・・・そう」



使い魔「昨日気づいたんですが、本に反応があります。この森の中に悪魔がいます。」

キロ「・・・行かなきゃダメ?」





【雨女悪魔】

憂鬱とため息の悪魔

人の感情を消沈させて自分のテリトリーに引き込む

植物のような長い髪と無数の手を持つ形相




使い魔「もしかしたら、女性の娘さんは悪魔に捕らえられているだけの可能性があります。」

キロ「・・・一宿一飯の恩義だ。少し森に入って様子を見るだけだからな・・・」






森は奥へ行くほどに暗く静かになっていく。

気持ちが沈む。



キロ「なあ、ひとつ聞いていいか?」

使い魔「なんです?」

キロ「俺が死んだら、どうなる?」

使い魔「・・・・・正直にいいますと剣を回収して次のひとを探します。」

キロ「使い捨てかよ。」




思い出したくもない最近の出来事が走馬灯のように頭をめぐる。


(キロ=エバンスを追放処分とする)


(貴様は首だ・・即刻立ち去れ・・・ほんとうにどうしようもない・・・)


(なあ、もうしばらくこの城に滞在したらどうだ?せめて次の仕事が見つかるまで・・・)


(心配しなくても大丈夫・・・俺は大丈夫だから・・・)




気持ちが沈む。

暗い森が牙をむく。

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