サイコのサイコパワーでサイコロを回すサイ

キギョウの体はボロボロとなり、魔力も尽きてしまい、命の灯火が尽きようとしていた。



「ハァハァ…すまねえみんな…結局ブラッククリスタルは破壊出来なかったよ…」



キギョウはその直後大量の赤い汁を吐き出す。



「ゴホッゴホ!ちっ、ブラックパワーの使い過ぎで寿命が近づいて来やがった…!」



キギョウが放ってきたブラックパワーは威力は高いが自らの体を内部からボロボロにしてしまう諸刃の剣。


キギョウの酷使残酷拳、冷気陰湿拳はストレス、心の闇を力に変える[ブラックフォース]を酷使するので寿命は使う度に10年すり減ってしまう。



「しかし…まだ俺はここで倒れるわけに…」


キギョウはブラックパワーの使い過ぎで体力もストレスも極限の状態だが仲間達との思い出を胸にもう一度チャンスをかけた。



実際ブラッククリスタルは破壊されていないもののヒビは入っている。


もう一度放てばあるいは…。


「目的を目前にして…俺はまだ倒れるわけに行かねえ!」



キギョウはもう一度立ち上がる。



そして最後の力を振り絞り、ブラッククリスタルめがけて放った。


が、キギョウは激しく吐血し、それだけで無く体のあちこちに切れ目が入り、そこからブシャーっと血が噴き出る。


そして、全身の骨がボキボキと折れてしまい、キギョウは激しい全身の痛みで倒れ伏し、悶絶する。



やがて頭が真っ白になり、キギョウは痙攣を引き起こしたのち、その場で冷たくなった。



みんな…すまない



俺……ここまで……だから




また……あおうぜ……。



キギョウの出会ってきた強敵(とも)、小夜子、まほ、滅斗、アヤネとの思い出が走馬灯になって蘇ってくる。



こうしてキギョウは世のブラックとの戦いと



自分そのものとの戦いに終止符を打った。




しかし亡くなったキギョウの姿は。

この上ない安らかなものだったという。

キギョウはそこで、とある人物に出会う。


その人物はピンク色の長い髪に二つ白いリボンでくくりつけ、瞳は黄色に輝き、純白のドレスを纏ったうら若き女性の姿をしていた。



いやその姿は女神と形容しても良い。



その女神は翼を羽ばたかせ、キギョウに優しく微笑んでいた。



彼女は雲から現れてきたような感じでその隙間は光輝いているように見えた。



(これは…そうか…あれが[円環の理(えんかんのことわり)]ってやつか…)



キギョウは聞いた事がある。



戦い力尽きた者を迎えに来る為に現れる女神がいると言う話を。


「なあ女神様…ひとつだけ…頼まれてくれるかな…?」



キギョウは優しい瞳でその女神に語りかけた。






ーーーー







地上の世界は相変わらず光と闇が交わり合っている。



大人達は必死に経済を支え、子を育て、あるいは兵士となり戦う。




そして少年少女は将来その企業戦士となるべく勉学に励み、ライバルと競いあう。




日本国…そこはとりわけ世界の中心と言えるべく海外に沢山の影響を与え、経済も発展していて人々は飢えることも無く歪みも少ない天国のような美しい繁栄した国。




それはひとつは企業戦士達が朝早くから働き夜遅くまで物を作り、考え、世に出している。


そして。

もうひとつは企業戦士とその子供達を主婦が支え家庭を支えているから。

子供を育てて見守り、企業戦士を迎え、または自ら企業戦士にもなり活躍する。



だがもう一つ忘れてはいけない。




災害あるいは混乱の元となる[ダークマター、そしてダースレディ]と戦っている勇敢な少女達がいることを。




彼らは[魔法少女]と呼ばれ、魔法妖精と言われる一見可愛らしい動物と契約を交わし、魔法の力を手に入れた少女達である。



彼女らは勉学に励む傍ら魔獣が現れれば戦うと言った命がけの日々を青春を犠牲にして過ごしていた。



ーーーー



時は朝。



ある平凡な家。



一人の少女がその頃ベッドにくるまり横になっていた。



「この魔法少女まほちゃんがおしおきしちゃうぞ~むにゃむにゃ…」



魔法少女となって敵と戦っていた夢だがそんな時一匹の黒い猫が「にゃん、にゃん!」と言いまほに猫パンチをお見舞いしてきた。


猫パンチ数発食らい、ようやく起き上がるまほという少女。



「んも~キギョウ丸殴りすぎ…」


まほはキギョウ丸と言う黒猫を抱いて囁く。


そしてまほは制服に着替える。


「いくよーキギョウ丸!」


「にゃん!」



そして二階から一階に降り、食間に向かうまほとキギョウ丸。



食間ではテーブルを囲んで父が新聞を読み、母が朝食の支度をしていた。



テレビも付けているが、二人してテレビは見ず、音があると賑やかで良いといった感じにそれぞれの事をしている。


「おはよう!お父さん!お母さん!」



そこでまほは父と母に元気よく挨拶する。


「うむ、おはよう」「おはよう、まほ!キギョウ丸!」



父は新聞を読んだまま挨拶をし、母は顔を向け挨拶を返す。



「今日も魔法少女になる夢みたんだ!それでね!」


夢を語り朝を盛り上げるまほ。


ーーー


「おはよー!」



「おはよーまほちゃん!」


しわがなくアイロンが為された制服を纏い学校に向かうまほ。



まほは近所の人達に元気のいい挨拶をしていった。


そして一人どんよりして猫背で学校へ向かっている男子学生。


「おはよー滅斗君!」


バシンッ!


「いてっ!」


まほは元気なく歩く滅斗と言う男子生徒に元気づけるよう目一杯背中を叩いた。


威力はそれなりにあり、体が支えきれずに倒れ、ようやく手を地につける滅斗。



「全く朝から手加減無しだな!」


滅斗は背中をさすりながら立ち上がる。



「朝からへこんじゃってどーしたの?お姉さんに相談しなさい!」



まほは自分より幾分背の高い滅斗を見上げでドヤ顔で言い放つ。



「同学年だろうが、テストが悪くて凹んでるんだ…」


滅斗は軽く突っ込みながらもまほと人生相談などして語り合っていた。



ーーーー




そして一方住宅街から少し離れたとある神社。



ーーーー



そこでは二人の少女が心を無にし、瞑想をしている。



「二人とも、そろそろ学校の時間ですよ」


そこで、長い銀髪に巫女服を羽織った若い女性が二人に話しかけてきた。



「はい、アヤネ様」



二人は立ち上がり、羽織っていた巫女服から私服、あるいは制服に着替える。



二人は義理の姉妹で一人は乙女に近く、一人はまだあどけない少女と言った姉妹。



小夜子とナツキであった。



「瞑想している時考え事してたでしょ?ダメじゃない瞑想中は心を無にしなきゃ」


年上の小夜子という少女は妹ナツキを軽く叱る。



「えへへーばれたー?だって今日は楽しい遠足なんだもん♪」



「はいはい♪」



二人はこういうやりとりをして支度をしていた。


そして修行の間から家に移動し机を囲んで食事をとる一家。


机には美味しそうな和食メインの朝食が小夜子達を誘う。



そこの小夜子達の家では電気、テレビ、冷蔵庫などあらゆる電化製品は並んでいてナツキはスマホを弄っていた。



「ナツキったら朝からスマホを弄ってたらいけません!」


スマホを弄っているナツキからスマホを取り上げる小夜子。


「あーん返してよぅ!」



二人がちょっとしたやり合いをしている間、アヤネがやってきた。



「朝から賑やかね、でもナツキ、朝からスマホを弄ってたらダメですよ♪」


ナツキに優しく注意するアヤネ。


「ぶーっ」


むくれるナツキ。



「さあ食事を摂りましょう♪」



そして3人はテレビを見ながら食事を摂った。


ーーーー



掃除された神社の階段を降りる小夜子とナツキ。



そこで二人はあの滅斗とまほを見かける。



「おはよー小夜子ちゃん、ナツキちゃん!」



先にまほが挨拶してきた。


「お…おは…」



一方滅斗は小夜子と言う少女を見て顔を赤くして緊張していた。



「おはようまほさん、滅斗さん、ほらナツキも挨拶しなさい!」


小夜子は挨拶せずよそ見するナツキを小突く。


「ぶーっ、おはようございます…」



そしてまほ達は学校に向かう。



ーーーー



学校の教室、生徒達は友人と駄弁ったり寝ていたり様々なことをしている。



まほは前者で滅斗は後者である。



「すごーい!」


「でしょでしょ!」



まほは友人達と流行の話をしていて、滅斗は机に項垂れているといった感じだ。



クラスでは、薄椅子 まほは親しみやすくフレンドリーな性格から人気者で、亜流出 滅斗(あるて めつと)は無愛想な為か少々浮いた存在であった。



一方才色兼備で性格も良く、勉強も出来て運動も出来、何より美形である事から男女と共に憧れの的となっている少女がそのクラスにはいた。



袴 小夜子(はかま さよこ)

そして人望の厚さから委員長を務め、教師からの評価も高い。



「くそ…手が届きそうで全く届かない…彼女は俺にとって雲の上のような人だ!」



滅斗は何度か小夜子に会うものの思わず緊張してしまい話せるものも話せない。



まほとは普通に接する事が出来るのだが、何故だろうか?


また、他の男子生徒からも小夜子は高嶺の花的な存在だった。


「こら滅斗!授業中だぞ!!!」


突然の教師の怒鳴り声。


「ほえ…?」


滅斗は起きていたし教科書開いて教師の話を聞くふりをしていたのだがどう言うわけか教師に牙を向けられていた。



そして他の男子生徒も滅斗を如何にも殺気立った表情で睨み、一方の小夜子は顔を赤らめてよそを向いている。



女子生徒はクスクスと笑い、まほはそんな状況の中いつも通りだった。


「どうしたんですか??」(何言ってんだこいつ?)


滅斗は教師に敬語で聞くも、心の中で皮肉る。



「貴様教師に向かって!」


「ひいっ!?」


滅斗は訳がわからなくなり、後教師や男子生徒達に命を狙われる恐怖心を感じ、その場で逃げてしまう。



滅斗は今、心が皆に知られてしまう[サトラレ]状態になっている。



それをある少女は気づいていて、彼の後を追おうとしていた。


(わけわかんねえよ!なんで突然先公とクソ男子共に睨まれないといけねえんだ!!)



滅斗は自分がどんな状況になっているかわからず、逃げ惑った。



そんな中、「あのお兄ちゃん変なこと言ってるー」と幼児が滅斗に指差し、「相手しちゃ駄目よ!」と母親が幼児に諭していた。



物陰に隠れて息を整える滅斗。



やがて、人影がちょうど滅斗の後ろに来ていた。




その人影は後ろからポンと滅斗の右肩に手を触れた。



「うひゃっ!」



肩を触れられた滅斗はまるでスカートをめくられた女子のように大袈裟に体を跳ね上げ、ユニークな顔をして後ろを振り向いた。


滅斗の右肩に触れたのは滅斗のクラスメイトであり、巫女でもあり、クラスの憧れの的でもある袴 小夜子だった。



「小夜子…さん!?(さ…小夜子さんが俺の前に.…ひょ…ひょっとして告白!??)」



滅斗は小夜子を前にドキドキし、ひょっとして告白しに来たのでは無いかと淡い期待を抱く。



一方の小夜子は「いやそれは無いから」と真っ向に否定した。



「え?」



滅斗は自分の心を読んだかのように振る舞う小夜子を前に戸惑いと落胆が交互に交わる。



「亜流出 滅斗さん、貴方は悪霊に取り憑かれてるわ、私が今お祓いして差し上げます!」



そう言うと小夜子は札を取り出し、それを滅斗に投げつけた。



札は滅斗の額に取り付き、滅斗はその直後身動きが取れなくなる。


「か…体が動かない!?」(エ○エXプレーか!小夜子さんがこの俺に愛の一撃をっ!)



「はぁ……汗」



小夜子はジト目で呆れた表情をつきため息を漏らす。



小夜子にも、周囲の人にも心の内を読まれサトラレになっている事に気付かず妄想に耽る滅斗。



「ちなみにあなたはサトラレになってます、のでなるべく変な妄想はやめてください」



小夜子は可哀想なので言ってあげようと棒読みで滅斗を諭した。


ちなみにサトラレとは、本人は何も言わずとも心の中で思っていることが、そのまま声となって他人に伝わってしまう霊障(れいしょう)の一種と言われる。



以心伝心と言う言葉もあるように、本来思っている事は周囲に伝わりやすいものだが、サトラレはそれが更に強くなって赤の他人にももろわかりに声が届くもの。



聞いた事はあるがまさか自分がそのサトラレにかかってしまうとは夢にも思わなかったのだろう。



考えている事が、好意を寄せている小夜子からも悟られ、一気に生きていく自信を失う滅斗。



「えぇっ!?」(げえっ!?俺小夜子さんに嫌われた!??一生の終わりだ!自殺してやるっ!!!)



滅斗は心の中で喚く。



「なるべく自殺はしないでください、それに心配しなくとも私は貴方は好きでも嫌いでもありませんからっ!」



それは滅斗の男心を余計に傷つける一言だが、構わず小夜子は妖力を指先に溜める。


「悪霊退散!」


小夜子の指先から放たれる赤い電撃。


電撃は滅斗にも衝撃が走るが、同時に悪霊にも衝撃が走る。


とりわけ悪霊を祓うにはとっておきだ。

人間にとっても痛いが。



『ぐえぇっ!?』



かくしてら小夜子のお祓いで悪霊は退治され、滅斗のサトラレ状態は祓われた。



「もう大丈夫、サトラレは祓われました。もう変な妄想を抱いても大丈夫ですよ♪」


小夜子は笑顔で滅斗に伝えた。



(どよ~ん…)



しかし滅斗は小夜子に妄想を読まれた事にショックを受けてそのまましばらくは立ち直れない状態となった。



そんな滅斗に声のかけどころに迷う小夜子だが、そんな時後ろから女子生徒が滅斗と小夜子に声をかけてきた。


「いたいた!滅斗くん!小夜子ちゃん!大変だよ!学校に…!」



走って来たのは滅斗や小夜子のクラスメイト、薄椅子 まほだった。



立ち止まり、膝に手をつけてハァハァと息を正すまほ。



そんな時、後ろから影が現れた。



それは、地球外生物のような、奇妙な生命体。


「まほ!危ない!!」



小夜子がまほに注意をかけようとする間、滅斗が駆け出した。




地球外生物はイモムシのような姿で、顔はピエロのような奇妙なモンスターだった。



「まほーー!!」



滅斗はそのモンスターに食われようとしているまほを滑り込みキャッチし、モンスターから守る。



モンスターは地面をパクリと食うが、食感が人そのものでなかったので口に入れたアスファルトを、吐き出す。


一方のまほは滅斗によってお姫様だっこされている。



「滅斗…くん」


「 へっ、全くまほはドジと言うかなんというか!」



そう言うと滅斗はまほを守るようにその化け物の前に立ちはだかる。



「俺のダチに手を出す奴はこの亜流出 滅斗(あるて めつと)様が許さねえ!!」



滅斗はモンスターの前に決めポーズをとる。



(この俺様カッケー!小夜子さんにここで良いところ見せたらきっと小夜子さんも…!)



滅斗は心の中でそうほくそ笑むが、一つ重大な事を思い出してしまった。



(あれ…俺変な妄想しちゃいけなかったんだっけ…?)



滅斗は目が点になり、青ざめる。


滅斗のサトラレは解除されているが、滅斗の中ではまだ抜けていないかもと言う不安がどうしても拭えなかった。


ここで滅斗は決めたかったのだが、サトラレてるんじゃ無いかと言う不安から思った通りの戦いが出来ない状態だった。



「まほっ!こっちへ!」


小夜子はまほがモンスターと滅斗の戦いに巻き込まれ無いように手を引き、抱き寄せる。


バシィッ!


「ぐえっ!」



滅斗はモンスターに弾き飛ばされる。



フェンスに叩きつけられる滅斗。


そこである一風変わった黒猫がまほの前にやってきた。


「ねえそこの君!僕と契約して魔法少女になってよ!」


「え?」


その変わった猫を見て小夜子とまほはうろたえる。



「早く助けないと君の友達も危ないよ!」



確かに今の滅斗はモンスターの前に防戦一方だ。


このままでは…!


そこでまほは状況はよくわからないものの意を決して言った。


「私、魔法少女になるっ!」


「契約は成立だ!君はエントロピーを凌駕した、さあ受け取ると良い、その力を!」


そこで薄椅子 まほは魔法少女となった。



一方モンスターと戦うどころか襲われている滅斗。


まほはステッキを構え、小夜子は薙刀を持っている。


「滅斗君から手を放しなさい!!」



そこで魔法少女まほと小夜子のダブル攻撃がモンスターに炸裂する。


「ギャッ!」


小夜子の薙刀での攻撃で痛みを覚え、まほのステッキから放たれる目眩しの光で一歩引いてしまうモンスター。



「滅斗君大丈夫?ヒーリング!」


まほが滅斗に駆け寄り、治療魔法をかける。



「全くサトラレ状態は解除したというのにまだ捕らわれてたのですか?」



小夜子はいつも通りの戦いが出来なかった滅斗に対しどうせサトラレに捕らわれてたんだろうと察する。


(あ…結局サトラレてたんだ…)


と心の中で嘆く滅斗。


「あとは私達が戦います!滅斗様はさがっていてください!」


小夜子は前にでるがそこでまほは引き止め、小声で小夜子に囁く。



「ここで滅斗君に活躍させないと滅斗君が後で傷ついちゃうよ!滅斗君プライド高いと言うか…繊細だから!」



まほは滅斗に対する本音を言ってしまうが後に無難な言葉に紛らわせた。



「むう、今の滅斗様は危なっかしいですが…仕方がありませんね…」



小夜子は今の滅斗に任せるとかえって危ないんじゃ無いかと言う不安もよぎるが渋々納得する。



「滅斗君!私は頑張ってる滅斗君が好き!だから一緒に戦おう!」


まほは滅斗を勇気づける。


小夜子は何も語らなかったが今のまほを見て(この子には敵わないな…)とにこやかな表情をしつつもそう思っていた。


「え?まほいつの間にそんなカッコウ…」


滅斗は魔法少女姿のまほを見て思わず仰天する。


「話は後!今はモンスターに集中して!私は貴方を頼りにしてるから!」


「あ、ああそうだな!」


滅斗はまほの労いにやる気が一気に引き立てられる。


「さあ行くよ!ブースト!」


まほはブーストをかけ、滅斗の身体能力を飛躍的に向上させた。



「滅斗様はいつも危なっかし…じゃなくて頼れる殿方です!私も応援していますのでこれを受け取ってください!」


小夜子は札を取り出し、それを飛ばすような形で滅斗の胸元に貼る。


それは対象者の防御力を高め、重傷となり得る被害でも、軽傷にとどめることが出来ると言う札である。


巫女である小夜子は色々な種類の札を常備し、先程の薙刀も札から取り出したものだ。


(二人ともこんなに俺を頼りにしてくれてるんだ!俺はやるぜ!)



滅斗は感激と共にブーストと護符を受け取り、やる気も合わせてモンスターに目を向けた。



「とくと味わいな!この亜流出滅斗様の愛と正義の鉄拳を!!!」



滅斗は一秒に50発撃てる程の速さの鉄拳を連続してモンスターに浴びせる。



「グギャアアァッ!!!」



そしてモンスターは滅斗の攻撃を受けて生滅した。


モンスターを倒した滅斗は後ろを振り返り満面の笑顔をまほと小夜子に向ける。



「やったぜ!まほ!これが俺の力だ!そして小夜子さん!貴女のおかげで…」



滅斗は二人に実力を認めて貰えたと喜び勇むがその時まほと小夜子はと言うと…。


「早く学校に戻らなきゃ♪」



「そうね、先生に怒られますから」



っと喜ぶ滅斗を相手にせず、学校へと急いで行った 。



滅斗はガクンと肩を落とし落ち込んだ表情でまほと小夜子の後についていった。



そしてまほと小夜子、そして滅斗のモンスター退治劇は幕を開ける。



モンスターを地上で暴れさせ、地球征服を目論むのは魔王キギョウ。





上手く行かず格差の激しさを憂いたキギョウは、女幹部キヤク、マッドサイエンティストメイシ、そして格闘技に精通し大柄でどっしりした体格を持つブフを従え、日本のあらゆる所で自分だけの独裁国家に作り変えようとしていた。




それを止めようと魔法少女まほ、巫女小夜子、熱血少年滅斗は各行く先でモンスターや魔獣を、倒し、幹部を苦戦の末倒していく。



そして最後の拠点、ブラック城に乗り込む勇者一行。




「フハハよく来たな!俺が日本を制圧している大魔王キギョウだ!勇者だか魔法少女だか知らぬが貴様らのような子供に大人の苦しみはわかるまい!!!」



キギョウはマントを翻し、狂ったような笑い声をあげて滅斗らを罵る。




「魔王キギョウ!これ以上貴方の好きにはさせない!」



まず小夜子が前に出て構える。



「私達は旅の途中でみんなの心と力を貰った、こうして強くなってここまで来たの!」



とまほも続く。



「覚悟しな!俺達の子供パワーは伊達じゃないぜ!!!」



そして、魔王キギョウと勇者達の戦いの火蓋は切って落とされた。



魔王キギョウはブラックフォースを用いて勇者達を苦しめていく。



「フハハ!お前らの力はその程度のものか!」



キギョウは余裕の表情で勇者達を小馬鹿にする。



「つ…強過ぎる、やっぱり大人には勝てないわ…」


と小夜子。


「何言ってんだ!何の為にここまで来たってんだ!」



と滅斗。



「諦めないで!私達には帰る場所があるから!」



まほは光を纏い滅斗達を励ます。


「そうね、アヤネ様とナツキも待ってる!ここで死ぬわけに行かない!」


小夜子は残された体力を振り絞り、立ち上がる。



「そうだな、親父やお袋、そしてマイト(滅斗の弟)も待ってる!」


滅斗も立ち上がる。



まほは「フルヒーリング」で皆の傷と体力を癒す。


「さあ、みんなから貰った力でホワイトフォースをその場で!」


まほは言う。


「おう!」


「ホ、ホワイトフォース!?まさかあの!」


目を見開き狼狽え出すキギョウ。



ホワイトフォースとはブラックフォースとは対を成すフォースで、心の闇、ストレスを力に変えるフォースとは違い、希望、慈悲、愛を力に変えるフォースである。



滅斗達は「ホワイト神殿」で賢者からその力を授かったのだ。


[ギガアルテマ!!!]


眩い光がキギョウを飲み込む。


(こ…これがホワイトフォース!なんて暖かいんだ…!!)


キギョウは攻撃を受けているにも関わらず、感極まり、優しい涙を流す。



「もう良いよ、もう、良いんだよ、もう何も恨まなくて良い…絶望しなくて良いんだよ…魔王になって地上を破壊する前に…私が貴方を受け止めてあげるから…」



まほはキギョウの苦しみを貰い、そう言い放った。


そして滅斗、小夜子も。


「敵とはいえ、あんたは俺達にとって最高の強敵(ともだち)だぜ!」


「そうね、前にも会った事はあるかもと思ったもの…良い戦いが出来たわ」


その言葉を聞いたキギョウは嬉し涙を流しながら勇者達に感謝の言葉を述べた。



「ありがとう我が強敵(とも)よ!来世(つぎのよ)でも何処かで会おう!」



そしてキギョウは光に飲まれ消滅していった。


こうして改変されたブラックマンの物語はこれで幕を閉じる。

そして願いで地上改変して貰い、自分を魔王にして滅斗らを勇者にしたキギョウに、女神は聞いてきた。



「これで宜しかったのですか?」



「ああ、奴らがどれだけ成長してたか見たかったんだ、だがわかった、あいつらは滅茶苦茶成長して、立派になってる、これでブラック企業に苦しむ事も無いだろう」


キギョウは安らかな表情で女神に述べた。



「貴方は仲間思いなのですね、では行きましょう、次の世界へ!」


「ああ!」



こうしてキギョウは、女神の小さな手を握り、第二の人生を過ごす世界に、円環の理に導かれて飛び立って行った。



ーーーー魔法生物ブラックマンーー終ーー

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