第9話 取扱い及び注意点 (寓話的SF)

植彩しょくさいの取り扱い及び注意点』


1.植彩は丁寧に扱ってください

 植彩はとても繊細で手入れには手間のかかるものです。このたび、植彩をご入手したお客様におかれましては、専門の植彩師と必ずご契約を結び定期的にお手入れをすることを、おすすめいたします。

 また、お客様の不手際から枯死させてしまった場合は、当店はその責務を負いません。枯死した植彩は一般のゴミとして処分できませんので、協会へお申し出の後、必ず所定の手続きを踏んでください。


2.盗難に遭われないよう、室内での栽培を推奨いたします

 植彩は高い需要があり、長く育成しているものほど市場価値が高騰しております。万一盗難などに遭われぬよう、室内及び鍵のかかる温室での栽培をおすすめします。

 また、所轄の警察へ防犯登録をしておくことも併せておすすめいたします。


3.植え替えの時期は専門の植彩師へご相談ください。

 植え替え及び株分けには必ず植彩師へ、ご用命ください。非常に高度な技術ですので、むやみに枝や体を切ったり傷つけたりしないようにしてください。


4.肥料の与えすぎにご注意ください

 肥料の与えすぎは、体の肥満につながります。ただ、肥満体の植彩をご希望されるのでしたら、専用の肥料をお買い求めのうえ、植彩師にご相談ください。

 また、裸木でいるより防寒や強い日差しをさけるためにも、衣を着せるようにしましょう。


5.腕木を増やしたい、腕木を固定したい場合

 腕木は基本二本ですが、最大八本まで増やせます。それ以上に増やしたい場合は、協会への申請が必要となります。

 好みの体勢を作りたいときには、専用のギプスをご活用ください。ただ、関節をいちど伸ばしてからでないと、うまく変形させることが出来ません。無理に動かすと関節が折れ曲がるのでご注意ください。


6.アカダニの対策 

 アカダニがついた場合は、幹を洗ってください。また駆除剤を噴霧するときには、顔の部分にかからないようおきをつけください。変形をする場合があります。


7.髪の染色について

 髪を好みの色に染めるには、市販の染め粉の使用が可能です。ただ、品種によってはかぶれる場合もあります。接ぎ木や掛け合わせで生まれた品種は特に注意が必要です。

 必ず、パッチテストをしてからご使用ください。

 また転売する場合には、生育データにそのむね記載漏れがないかご注意ください。


8.雄株が発生した場合

 通常は雌株しかない植彩ですが、挿し木や株分けから雄株が発生した場合は、速やかに協会まで登録の申請が必要です。また、みだりに雄株の存在を周囲に知らせないことです。雄株からの病原菌を拡散しないためにも、早めに専用のケースに収納してください。


9.発言や歌について

 植彩は、突然言葉を発したり歌らしきものを歌ったりする場合があります。それらには意味はありません。聞き入らないこと、また目を合わせないことをおすすめします。

 無理に口をふさごうとすると、かじられる場合もあり非常に危険です。黒い布で目を隠すことで、声を封じることが出来ます。あまりに長く続く場合は、全体を黒い包帯状のもので巻いて固定したうえ、植彩師へご相談ください。


10.植彩の寿命について

 植彩の中には、三百年以上生き続けているものもあります。その美しさを愛でられてきた証です。あなたの代で終わらせることなく、次代へと受け継がれていくよう、心して栽培をしてください。


最後に

 植彩は、今は没交渉となった「エルキューム界」から五百年前に、もたらされたものです。

 栽培の研究は進みましたが、まだ未知の部分が多く存在します。あなたが植彩を栽培することで新しい発見につながることもあり得るのです。

 小さな変化も見逃さず、数の限られたこの美しい植彩を次世代へと渡していきましょう。


終わり

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