白き姿

 彼は白き聖者のようであった


 彼の姿はけがれ無き聖者のようであった


 彼の言葉に疑問を持つ人はいない


 誰一人いない


 それは聖者のようであるから


 彼は純白じゅんぱくの仮面に守られた聖者


 彼の仮面に疑心を持つ人はいない


 誰一人いない


 それは純白の仮面であるから


 それはけがれ無き仮面であるから


 しかし彼の仮面の下を見た人はいない


 誰一人いない


 彼もまた己の仮面の下を見たことがない


 その仮面を取った彼が


 己の姿を鏡で見たとき


 鏡の中には水仙の花が咲いていた


 しかし彼にはその花さえ見えない


 彼はなにも見ようとしないから


 そして彼は今日も


 穢れ無き白き聖者のようであった


 彼の姿を知る人は誰もいない

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