第27話
わからない。目的はなんだろう? ボクらの抹殺? そんなのにわざわざこんなことしない。……やばい、3姉妹ごと処分がいますごく理に適ってるよ。
「お兄ちゃんに何かしたら殺す!」
「頭蓋骨引っこ抜いてやるわ!」
「オメーらもなあ!」
そして今現在の空気も最悪だ。
『じょうさいワニ』。背中に『ワ』という国のお城を背負った、巨大なワニのモンスター。専ら、移動要塞として使ってるらしく、今回の任務にボクらが与えられた。モンスターの知性って、どうなってるのか本当に? ボクらみたいなのもいれば、言葉も話せないのもいる。その差は……。
「うるさいですわよ」
「静かにしてくださいね~トカゲさんにブリキさん~」
「「んだとこら!」」
知的な思考を邪魔しちゃってもう。乗り込んでから一秒だって喧嘩を止めないんだから。このタタミやフスマっていう内装は結構気に入ってるのに、滅入るよ。
「なあ、どんな街なんだよそこは」
「見る限り、別に普通の街だよ。ボクらの村より小さいくらい」
「なんでそんなところを?」
「それがわからないんだよ」
よっぽど強い所か、勇者がいるのか。とにかく全うなところじゃなさそうだ。
「うほっほ! 俺に任せろ!」
「ドラミングしないでよジャイア」
「あああああ! うるせえええ!」
「は、『配合』できてれば……」
オネスが泣き出す。そう、この場にフジコさんはいない。というか、模擬戦前から一度も見ることすらできなかった。どうやら、『妖魔軍』でもかなりの重要人物とされたらしくて、師団長に聞いても教えてもらえなかった。『転生』、『配合』は言わずもがな。
つまり、いま3姉妹と戦うと、確実に負ける。おまけに指揮権はボク。これは色んな意味でやばい。作戦が失敗するとボクの責任、なら3姉妹はボイコットする可能性が高い。それどころかどさくさ紛れで殺して戦死なんてことも簡単だ。
逃げたいんだけど、それだと敵前逃亡で余計にきっかけを与えるだけだ。
「はあ……」
フジコさんに会いたいよお。
森にワニを止めて、城から降りる。
「ここでまっててね」
「ぐあ」
「なるべく動かないようにってお願いして」
「わかったお兄ちゃん」
ミドが話せてよかった。トモナミは対抗心出して、そこら辺のモンスターに話しかけないの。適材適所なんだから。
「で、どうするんです指揮官」
「嫌味な言い方だなあ」
「嫌味ですよ~」
ムカつく。
「まずは、情報収集だね。ミ……トモナミ、お願いできる?」
「まかせて!」
「あ! あたしがいく!」
「トモナミがいくの。迷彩術を使って、出来れば映像も欲しい。戦闘は避けること」
「ばっちりよ」
隠密ならトモナミだ、早速透明になっていく。万能で頼りになるよ。
「回りくどいですわね」
パマが噛みついてきた。ここはうまくやらないと。
「情報は大事だよ。敵を知れば―」
「では、知る間もなく片付けてさしあげますわ」
「! おー」
もういなかった。パマとミレの姿はなく、風がそよぐ。
「くそ! 皆いくよ! ヤン!」
姉たちに反応できず、ぽかんとした顔で佇むヤンがボクの叫びに身を強張らせた。
「君は追いかけて! ボクたちより早い!」
「な、なんでお前がめいれ―」
「はやく!」
「! う、お、お前に言われて行くんじゃないからな!」
ようやく飛び立った。ボクらも遅れてられない。
よっぽどじゃなければ、3姉妹は負けない。けどよっぽどが起きるのが現実ってもんなのさ。今までだってそうだ。
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