第21話

 翌朝早く、ボクたちは村の前に集められていた。村にいるモンスターがだいぶ減っている、あの村に送っているんだろうか。

 

「よう」


 だいまどうさんが、ボクの肩に手を置いた。なんというか、気の毒そうな顔をしている。


「どうも」


「君らも苦労するな」


「なんでだい?」


「妖魔軍だぞ? あそこは、なにしてるかわからん連中が多いからな」


「くろまどうさんは『妖魔軍』じゃないんですか?」


「バカ言っちゃいけない。俺は『剛魔軍』だよ、連中みたいな陰険とは違う」


 声を潜めて囁く。なるほど、魔王軍にも派閥があるのね。『妖魔軍』と『剛魔軍』、ひょっとするともっと細分化されているのかも。

 『剛魔軍』が先兵とみると、『妖魔軍』は裏方……いや、僕らが急に引き渡されてそれをくろまどうさんが良しとしないところを見ると、ボクらをモンスターに変えたのも『妖魔軍』なのかもしれない。


「ま、気をつけな」


 家からジャコウ師団長が出てくると、くろまどうさんはボクから離れていった。どこもかしこも一枚岩っては難しいのね。


「さってさて、坊やたち」


 手を揉み揉み、ジャコウ師団長はボクたちを見回した。メイクがピエロで分かりにくいけど、きっとほくそ笑んでるんだろう。


「よくぞ生きていたねえ。報告じゃ皆殺しって話だったけどねえ」


 勇者の一件だな。やっぱり、『妖魔軍』がボクらをモンスターに変えた元凶らしい。つまり元をただせば……。難しくなってきた。


「おう! だからよ! 父ちゃん母ちゃんの敵とってやるんだ!」


「そ、そうだよ!」


「そして墓前で夫婦の契りを立てるんです!」


「お兄ちゃんとずっと2人きりで過ごすの!」


「人型人型人型人型!」


「おやおや威勢がいいねえ」


 この子たちはそういうの考えないのかな? 怖くなってくるよ。特にミドとトモナミ。


「そしてあんたが?」


「はい、フジコです」


「ふふん、あたしらは人間だろうとなんだろうと役に立つなら大歓迎さね。ま、安心なさいな」


 全く安心できないよ。参ったなあもう、どんどんまずい状況に追い込まれてる気がする。


「さ、いくわいな」


 巨大な魔方陣が地面に浮かび上がり、ボクたちを包み込む。まばゆい光の中で、くろまどうさんが親指を立てているのを見て、立て返せたのがせめてもの救いだった。

 

 

 

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