第19話

 ミドが空から『かえんだん』で高台を落とした。村のあちこちで火の手が上がる。


「いくよ」


「おっしゃああああ! うほうほうほ!」


「配合配合配合……」


 君たちは……。故郷と同じことを今度はボクたちがする側になったって言うのに……あ~もうどうしてボクだけこんな悩まなきゃいけないんだろう? 人間性なんて捨てたいよ全く。


「大丈夫かい?」


 察してくれてるのが部外者のフジコさんなんだもんなあ。肩に置かれた手から滲む温かさがたまらんです。


「ちょっと! くっついてるんじゃないですよ⁉」


「いいからもう……突撃!」


 ボクたちは(ボクとフジコさんはエスパに負ぶってもらって)村に突っ込んだ。


 突然のドラゴンの襲撃と、火事の鎮火に奔走していた村の人たちはボクたちの攻撃に対応しきれなかった。

 武器を構える間もなく、ジャイアとトモナミの手で次々倒されていく。魔法を使うエスパは勿論、オネスも身軽さを活かして喉を嚙み千切っていく。


「死ね!」


「あら?」


 お腹から棘が三本。鍬かな? 振り返ると、ボクと同じくらいの子供が震えながらこっちを見ていた。


「ば、化け物―」


 最後まで言えなかった。トモナミが肩から上を斬り飛ばして、レーザーで消し飛ばしたからだ。


「大丈夫⁉ このがきゃあ!」


「消し炭踏み潰さなくていいから……」


 何かすごい重厚な想いに囚われていたはずなのに、あっという間に忘れちゃった。鍬を引き抜きつつ、ボクは戦況を確認する。

 もう動いてるのも少ない。後は―


「ぎゃああああ!」


「ジャイア⁉」


 ジャイアが降ってきた。胸に焦げたような跡ができてるけど、すぐに起き上がる辺りダメージは大きくなさそうだ。


「くそ⁉」


「どうしたの?」


「あ、あいつら―」


 離れたところに、3人の男の人が現れた。半裸に近くて剣を背負ったのが2人、ローブ姿が1人。勇者じゃないな、冒険者か傭兵だ。2人は剣士、もう1人が魔法使いでジャイアを吹き飛ばしたんだろう。表情は恐慌してる、それほど自信がないんだ。

 

「トモナミ! 突っ込んで!」


「わかったわ!」


 トモナミが突っ込んで、それに合わせてボクが『どくのいき』を吐く。

 案の定、3人組は逃げ出したそうとするも、トモナミの機動力にそれを無駄と悟って迎撃態勢を取った。

 焦って投げナイフを投擲するが、あっけなく弾かれる。いよいよ浮足立って、魔法使いを蹴とばした。

 

「速くやれ!」


「む、無理だ! ガスに引火しちまう!」


「じゃあ氷の魔法とか―」


「火しか使えねえよ!」


「この役立たず!」


 魔法使いの人は意外と冷静だね。

 そう、今魔法を使えばボクの『どくのいき』に引火する。トモナミには屁でもないけど、人間の彼らには耐えられない。

 けどー


「あらよっ」


 本命はこっち。目の前に気を取られ過ぎて、空のミドに気づかなかったね。着地の体重で十分、ぺちゃんこだ。移動魔法を持ってなかった時点で積み。

 さて、これで終わり。高台と2,3の家を除いてそのままだし、村の人は逃げたか死んじゃったか。とりあえず、くろまどうさんの依頼は達成できたわけだ。

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