第16話

「キュウ?」


「ああ⁉ なんじゃその首の傾げ具合は⁉」


「おどれ当てつけかボケ‼」


 憐れリス君は消し炭にされてしまった。というより、ぼくが『カウデッド』に『転心』してから、目に入る生きているもの全てミドとトモナミが殺してしまっている。


「いやですね。ほら、野蛮がうつりますよ? こっちに」


「引っ張らないでって」


「ミド! 俺はそのままで十分可愛いと思うぞ!」


「お、オレもできるんですか?」


「もちろん。モンスターならだれでもできるよ」


 フジコさんによると、強化の方法は2種類。

 ボクにやった、魂を混ぜ合わせ、大元に定着させる『転心』。姿はそこまで変化しない。

 魂を混ぜ合わせるところまでは同じで、生まれ変わらせるのが『配合』。姿は大幅に変わる。

 前者は元に付け足していく、いわば装備の感覚なので限界がある。後者は、赤ちゃんから成長させるので、両者の長所を併せた成長率が見込めるけど最初は大幅に弱くなってしまう。

 2人が怒ってるのは、『配合』で人間型になれるのに、危ないからやってもらえないことだ。ボクも止めたよ、さすがに主力がいきなり弱体化はまずいもの。

 しかしこんな技術が……フジコさんは中々謎めいてるな。


「ん? おい、村だぞ。……燃えるにおいがする!」


 ジャイアの指さす先に、うっすら煙の昇る村が見えた。


「トモナミ」


「……! 魔王軍の紋章が見える!」


「お、幸先良いんじゃない?」


「よし、あそこを目指して―」


「ぬおおおおおお!」


「おりゃああああ!」


 ミドとトモナミが飛び出した。




「死ねえええええ!」


「虫けらがあ!」


 2人を追って、ようやく僕たちが村に着いたとき、あらかた原型は失われていた。木造の家屋はミドの炎で焼け焦げて、炭になった人間がそこらへんに転がっている。蜂の巣の死体は、トモナミだろう。

 呆気にとられた魔王軍のモンスターたちが見ている前で、2人は石造りの倉庫を殴り続けていた。魔法の壁で覆われ、本来ならそれを解除してから攻撃すべきなんだろうけど、そんなのお構いなしだ。


「ひいいいい!」


「お、お願いします! 子供は! 子供だけは!」


「神よ―」


 とうとう魔法の壁が砕け、倉庫の屋根が崩れる。

 中の人たちは、泣き叫び命乞いし、神に祈り―


「うるせえ」


「いつまでも生きてんじゃねえ」


 踏み潰された。


「ねえお兄ちゃん! いいでしょ? もう安全でしょ?」


「配合配合配合配合配合!」


 完全に引いてるよ魔王軍の人たち。

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