第14話

 ぼくたちは木の案内に従って森を進む。陽光温かく、小鳥はさえずりリス駆け回る。その中を行く、きれいなお姉さん(格好は奇抜)とモンスターの集団。傍目にはどういうふうに見えてるんだろうね。

 

「手足はどう?」


「うん、快調快調」


 もとよりいいくらいだ。何か特別な力でもあるのかな? しかし立ち位置的にぼくはどうなるんだろう? 植物ゾンビ?


「僕の故郷だと人間にもやってたよ」


「へえ」


 応用できれば、医療にもいろんな分野にも使えそうなんだけどなあ。

 そんなことをつらつら考えてたぼくを、トモナミが抱き留めた。モノアイが忙しく散乱してる。


「9……いや、10」


「ぐぶう」


「ぐぶう」


 ぼくたちを囲むゴブリン。棍棒5、短剣3、弓矢2。べこべこの鎧は、人間から盗むか何かしたやつかな?


「え~……こんにちは?」


 まずは挨拶が大事だよね。


「ぐぶう」


 ぼくの目の前で、放たれた矢が静止した。ゴブリンたちは驚いたようにどよめく。


「ありがとう」


「危ないですねもう」


 矢が地面に落ちる。ピクシーの『風を操る力』だ。

 フジコさんが一歩前に出る。


「君たちごめんね。住処だったのかな? すぐに出ていくから―」


「お兄ちゃんに何しくさるんじゃゴラあ‼」


 ミドの吐き出した火炎弾が、弓ゴブリン2匹を消し飛ばした。足首から下が僅かに地面に残ってる、傷口を見る限り生焼けですね。


「ド外道があ‼」


 トモナミの右腕が機関銃に変形し、横一閃を薙ぎ払う。土が抉れ、木々と一緒に棍棒ゴブリンが5匹蜂の巣だ。弓ゴブリンに気を取られて、何が起こったかすらわからなかっただろう。


「ご、ごああ!」


 ここに来て、ようやく短剣3匹が、僕たちに向かってきた。飛び道具もちに直線に突っ込むのはいけないのに。やっぱり人間から変わった僕たちみたいなのは珍しいのかな?


「邪魔ですよ」


 ゴブリンたちにはそよ風だったろう。そんなさりげない風魔法が、彼らを細切れ肉に変えた。まずは血、そして肉と内臓が混じった臭気があたりに立ち込める。ゴブリンたちは全滅した。


「俺らっている意味あるか?」


「やめてよ暗くなるじゃないかあ」


 アイデンティティを模索する二人を放って、僕はゴブリンたちの落とした持ち物を検分する。ほとんどが使い物にならなさそうだけど、運よく短剣と盾がひとつづつ使えそうだ。人型の利点はこういうのだよね。今のところ、ぼくはゾンビ戦士ってことになるのかな?


「……わお」


 フジコさんが、呆れとも感嘆ともとれる声を漏らしていた。

 


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