第13話
「さ、改めましてフジコだよ。みんなこれからよろしくね」
「はい、よろしくです」
「け、後ろに気いつけな姉ちゃん!」
「最近物騒だからよお! 道歩いてて首チョンパなんぞ日常茶飯事よ! げはははは!」
「刺しますよ刺しますよ刺しますよ私のフィアンセを奪って刺しますよいやもっと苦しめて……」
「な、なんか嫌な予感がしねえかオネスう?」
「嫌な予感しかしないよジャイア……」
早速みんなと打ち解けてくれてるみたいでうれしいなあ。
「で、フジコさん。まずどうしますか?」
「その前にキミのそれ……」
「あ、気になります?」
すっかり忘れてたな右手足のこと。
「元の部位が無くなってるのかな? アンデッドならくっつくもんね」
「炎の魔法で燃えちゃって」
「そう、これからは戦う相手を選ばないとだめだよ? アンデッドは魔法使いと聖職者が天敵なんだから」
お、それらしいアドバイス。確かにゾンビの強みは打撃斬撃無効、不死身、毒攻撃主体の泥仕合だもんね。炎魔法が使える魔法使い、聖魔法の使える聖職者とは戦わないのが正解。ミドやトモナミの領分だ。
戦ったわけじゃないけど、勇敢さをアピールするために黙っておこう。
「ちょっと待ってて」
フジコさんが立ち上がって、歌いだした。綺麗な声だ、ミドたちも思わず聞きほれる。ぜひとも良い関係になりたいなあ。
地響き。そして森の奥から大きな木が『歩いて』来た。家くらいもある、木の巨人、ウッドゴーレムだ。村にはいなかったけど、本にはよく出てくる温厚なモンスターで、人間ともそれなりに良好な関係を保ってるらしい。
フジコさんは歌い終わると、ウッドゴーレムに親し気に手を振った。
「どうもこんにちは」
「んあ……なんだあおめえさん? その唄知っとる人間がまだいたんかあ?」
「おお本の通りのしゃべり方!」
「お前ってなんかずれてるよね?」
「まあ、森にいねえやつが随分いるでな。おめえら迷子かい?」
「ええ。それでこの子、手足無くなっちゃってそれで」
「あらあ、大変だなあ。ほれ」
ウッドゴーレムが指を地面に刺すと、僕の足元から木が飛び出して右手足の切り口に入り込んできた。そのまま複雑に枝が絡まって、木の手足を形づくっていく。
「あ……」
そっくりもとの形になったところで切れて、残りが地面に戻っていく。手を握ってみる。指まで自由に動かせる。ぼくの右手足が、復活した。
「すげえ……」
「ありがとうございます。それと、この森を抜けてできれば魔王軍のところに行きたいんですけど」
「魔王軍はしらねけど、ひらけたとこはあっちよ。おれはもう寝るぞいじゃな」
一斉に木が遠くの方まで揺れ始める。道しるべかな?
「ありがとうございます。ほら、みんなも」
「あ、ありがとうございます!」
「おうよ」
そういってウッドゴーレムは森の奥へ消えていき、すぐに他の木と見分けがつかなくなった。なんだろうか、非常に懐かしい、いい気分だ。安心するみたいな?
「お兄ちゃんそれ……」
「うん」
木の手足は、元の以上に馴染んでる。モンスターに、こんなことができるなんて。
「どう?」
「は、はい。ありがとうございます」
「よかった。じゃ、行こうか?」
ああ……腕も足も治って、この素晴らしい笑顔……。フジコさん、あなたはぼくの女神だ……。一生ついていきます!
「ちょ、ちょっとあなた、歩くんですか?」
「あ、そっか。歩けるからあんたもう背負わないでいいんじゃない」
「そこだけは良くやったわ魔物使い! けどお兄ちゃんは渡さないんだから!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます