第6話
しばらくして、僕たちは隣町の広場にいた。
石造りの建物が多いここは、少し離れてるのもあって都会みたいな感じに浸れたのを覚えてる。
お祭りのときは、屋台がいっぱい出てたっけ。
「ぎゃあああああああ!」
「はい次」
「やだやだ! 死にたくない! 死にたくない!」
「大丈夫よ。すぐにお母さんみたいになれるから」
「離せ化け物! お前なんかお母さんじゃない!」
今やってるのは、街に残っていた子供やおじいさんおばあさんをモンスターに変えることだった。
実のところ、どうやってるのかは僕もわからない。僕らがやられたときはとてもそんな事に気をやる暇はなかったし、今だって秘匿事項だとかで、村から来たモンスターたちが、幕を張ったキャンプに子供たちを連れこんで、出たらモンスターになってる。
連れ込み役には、変えられたこの村の人たちもいる。さっき僕たちが殺してしまった、子供たちのお父さんお母さんだ。なのに、なんの迷いもなく、わが子を連れている。
「あああああ!」
「おっと」
逃げ出した女の子を、こうてつかまきりが容易く真っ二つにした。元は、お父さんのはずなのに。
命を失った肉が二切れ、地面に落ちる。子供たちは悲鳴をあげ、失禁するものもいた。僕はそれを笑えない。
「あ、しまった」
「もう、なにしてるの」
「すんません」
「ちゃんと集めといてね」
狂ってる。僕が言えた話じゃないけど、狂ってる。
そういう僕たちも、知っている子が帰られてる前で毒なめくじ先生にお説教されてる最中だった。
「いいかい、もうやっちゃだめだよ?」
「でも先生。俺たち強いぜ」
「そうそう」
「それは運が良かったの。勇者にでも会ったら大変だ」
勇者かあ。
本でたくさん読んだ。
魔王を倒し、世界に光をもたらすもの。
今や僕はその憧れに潰されるモンスター。何度目かわからないけど、嫌になっちゃうなあ。
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