第5話
「い、いたぞ!」
「みんな気をつけろ!」
とうもろこし畑から飛び出てきた村の人を見て、僕たちは慌てて立ちどまる。
あれは、綿飴をつくるのが上手なクラさんと、……もう一人はわかんないや。あったことはあるんだろうけど。
「化け物め!」
「はい邪魔」
「ぱ―」
「死んで」
「ぷち―」
「大丈夫? 怪我ない?」
「お兄ちゃん私に抱っこされたいでしょ? 柔らかいよ?」
「あっちいってなさい!」
「なによ!」
トモナミのロケットパンチでクラさんの頭がはじけ飛び、ミドの踏み潰しでもう一人の人がぺちゃんこになった。
怖いのは、それをあんまり『怖い』って感じないことだった。
「おれたちいけるじゃん!」
「やってやろうぜ!」
「こら! 逃げるんですよ!」
それを見て、毒なめくじ先生の制止も聞かず、みんなが追ってくる村の人に突っ込んでいった。
「おらあ!」
「ぎゃ!」
「ひひひ!」
「ごぼぼぼぼ」
「逃げろ逃げろ!」
「がああああ!」
アイジャが素手で真っ二つに引き裂く、オネスが胴で絞殺す、ひのたまに変わった男の子が生きたまま燃やす、恐慌して逃げ出した村の人たちも、寄ってたかってみんなに襲われる。
「全く……」
毒なめくじ先生がため息を吐いて、まだ生きてる村の人に毒を吹きかけて殺していく。
「トモナミさん」
「え? はい」
「ちょっと村に戻ってこのこと伝えてきてくれません?」
「いってらっしゃ~い」
「な、なんで私が……」
「君が一番早いじゃない」
「く……すぐ戻るわよ」
「いっそずっといてもいいのよ?」
むき出しのチューブを破裂しそうなほど脈打たせながら、トモナミは走っていく。
「お兄ちゃん大丈夫? 硬くていやだったわね」
「もう抱っこはいいよ」
「だ~め。危ないから」
どうも僕は兄としての威厳にかけるなあ。
そしてこれから起こることを想像して、僕の気分は暗くなっていった。
動いている村の人は、もういない。
でも、子供たちは……。
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