第2話

 鐘の音が聞こえる。

 『授業』の合図だ。

 

「時間よ」


「あらおはようトモナミちゃん」


「おはようございます。お父さまお母さま」


「聞いたお兄ちゃん? やーねえ気取っちゃって」


「あらあら、大きくて気づかなかったわミドちゃん」


「朝っぱらからやめてよ二人とも」


 やってきたのは、お隣さんの女の子、トモナミだった。

 僕と違って頭もよくて運動もできる、おまけに喧嘩も強い怖い子だ。

 変わったモンスターも、かっこいいいキラードロイドだ。一つ目のサイボーグで、体中ぴかぴか光って肩にはキャノン砲がついてる。ずるいや。


「じゃ、行ってくるよ」


「行ってきまーす」


「お邪魔しました」


「さてママ、僕らも人間を苦しめようか」


「今日はみんなで旅人を襲うのよね」


 ……。

 モンスター化してるとはいっても、極端じゃないかなあ。まあ皆そうだから仕方ないのかもしれないけど。


「オイル臭いわねえお兄ちゃん」


「あらびっくり、トカゲがしゃべったわ」


 二人に挟まれて、僕は教会も兼ねてる学校に向かう。どうしてこの二人は喧嘩ばっかりなんだろうか。

 片や2メートルのトモナミ、片や5メートルのレッドドラゴン。ゾンビの僕は肩身が狭いや。

 村では色んなモンスターが働いている。石垣を作ったり、家を直したり、畑を耕したり。悪さもしてるみたいだけど、いつもと変わらない一日を見ると、なんだか変な気分だった。


「お、ゾンビ野郎」


「今日も腐ってるねえ」


 途中でアイジャとオネスが合流する。

 前は乱暴なガキ大将と、その腰ぎんちゃくの村一番のお金持ち。よく僕をいじめてた、いやなやつらだ。

 アイジャは胴体が樽のゴリラ、たるコング、オネスはネズミの上半身に蛇の下半身を持つへびねずみに変わってる。性格でてるなあ。僕はきっと例外だ。本当なら頭の良さを生かして魔導師とかになるはずだもん。


「お兄ちゃんの悪口は許さないわよ」


「あっちいきなさい」


「そ、そんなつもりはないぜトモナミ!」


「と、友達への挨拶だよミドちゃん!」


 僕は二人がミドとトモナミが好きだと睨んでる。これは90%の確率できっと当たっている。それでもその腐った性根が汚い言葉を吐き出さずにはいられないんだろう。哀れなやつらめ。

 けれども、ミドはともかくトモナミが僕の悪口に怒ってくれるのはどうしてかな? 聞くと怒るんだ。


「よし、みんないるな」


「「「「「はい」」」」」


 ともかく学校に着いて、担任の毒なめくじ先生に挨拶する。生徒というか村の子供たちは僕らをふくめても10人しかいない。

 毒なめくじ先生は魔王軍の兵士だ。モンスターに変えた僕たちみたいな人間の教育係らしい。

 今更だけど、殺された相手にどうして僕たちは素直に従ってるんだろう? 考えたら負けかな?


「今日は実践訓練にします」


「よっしゃ!」


「ジャイアの強さを見せてやろうよ!」


 悪いことなのに。

 根が邪悪そうな二人はほっといて、トモナミも乗り気で目を光らせてるのを見るとやっぱり攻撃衝動とか高まるんだろうな。


「それで、どこにいくの? 先生」


「はいミドちゃん。今日は……」


 皆、いや訂正。僕以外の皆が固唾を呑んで見守る。


「畑を荒らしに行きましょう」


 


 

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