惑星デルデレイト8における生物相とその活動(生活環)について

 α期における惑星デルデレイト8(以後惑星D8)は表面の葉緑素のため波長500-540nmの反射光を放っており、クオリア的記述法では緑色の惑星である。

 α期の惑星D8の地表には目立った凹凸は見られない。地軸の長さが赤道部の直径よりも0.328%短い、扁平した仮想球形モデルを作成し、実際の地形と比較しても300m以上の誤差は観測されない。非常に滑らかでフラットな形状をしている。

 しかしα期からβ期への移行時においては例外的に、地表組織の赤道部分に大きな変化が見られる。この時期、惑星D8標準時間で7日間をかけて、赤道部分には高さ50000mにも及ぶ24個の瘤状隆起が形成される。その後、極点部分2箇所でほぼ同時に地表組織の破れが生じると、地表組織の辺縁は赤道部分へ向けて一斉に収縮を開始する。これはα期における惑星D8の地表組織(以後D8α)が全て単一の生物であり、一繋がりの皮膚組織で体表を覆われているために起こる現象である。


 破れ目の生じたD8αの範囲は、ほぼ一日で惑星D8地表面積の10%にまで収縮する。収縮によりD8αが取り除かれた後には、β期における惑星D8の地表組織(以後D8β)が表面に現れる。D8βはD8αと同じく単一の巨大生物であり、体表の反射光の波長は690-730nmで鮮やかな赤色をしている。(なお現段階では、惑星D8上に認められる生命体はこのD8αとD8βの2体のみである)

 改めて視覚的に記述するならば、α期からβ期の移行時には、惑星D8の表面(の90%)は緑から赤へと約一日という短期間で塗り替えられる。


 D8αの体表の破れが2極点から生じることは既に述べたがこれは、1年(惑星D8の1公転周期)の90%を休眠状態で過ごすD8βが(おそらくD8αが最も薄く引き伸ばされた2極点部分からの透過光によって)覚醒し、D8αの体組織を捕食し、食い破ったことによる。

 D8βによるD8αの捕食は、D8αの体組織が惑星D8上から全て消失するまで続くが、それによってD8αが死滅することはない。惑星D8の赤道部分に現れる24個の瘤状隆起については前述したが、この中にはD8αの種子が一つずつ形成されているためである。

 それぞれの瘤状隆起は直径1mの種子と、それが装填されたバレル状構造物と、バレルの根元に直結した巨大な空気袋とで構成されている。β期への移行時に赤道へ向けて一斉に収縮するD8α体組織の辺縁が瘤状隆起に到達すると、その勢いで空気袋内のガスが急激に圧縮され莫大な圧力が生じる。圧力はバレルに装填されたD8α種子を猛烈に押し出し、種子は惑星D8の衛星軌道高度まで打ち上げられる。

 そしてD8βがD8αを食い尽くし休眠状態に入った後、D8α種子は惑星D8の地表へと落下して芽吹き、再び惑星全土を覆うサイズにまで成長するのである。


 なお、D8α種子は宇宙空間及び大気圏突入でも死滅しない。惑星D8の衛星軌道から外れたD8α種子が漂着することによって惑星上の全生物が絶滅したケースは現在までのところ5例までが確認されている。D8α種子の地球到達には厳重な警戒が必要である。

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