感情(彼女の場合)

 あまりにもあっけなく私はあの家から脱出できた。

「ねぇ、優都さん。あなたは何をしたいの?」

私たちはお互いになぜ死にたいのかを知らない。

それでも、いいと思ったから彼に委ねたのだ。


 「明日、僕も決着を付けてくるよ。それが終わったら、どこかに行こうか。母の実家が誰も住まなくなった状態で残っているからそこにでも行こう。誰かと一緒に普通の生活がしたかったんだ。」

優都さんはほほえんで言った。

完璧な笑顔の面は不自然で私をどこか不安にさせた。

あぁ、自分は他人のことを考えて感情を変えることができたのだなぁと今更ながら思った。

「今日は、僕の行きつけのお店に行こうと思うんだけどいいかな?

僕が作るよりおいしいご飯が食べられるよ。」


 高校生の自分でもわかるくらいに彼には陰があった。

何かを抱えていることはわかった。それも、最近抱えたものではないものだ。どうして、彼は今まで生きて来られたのだろうと不思議に思った。私なら彼の年齢まできっと生きられなかっただろう。


あぁ、彼は私なんかよりもずっと強くて本当は私みたいな女と死ぬべき人ではないのだ。

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