始発(彼の場合)
「優都さん。二人で・・・。ね?」
そう言った彼女は天使のような微笑み、いや、悪魔の微笑みかもしれない。
朝、彼女を見送り自分の支度をする。
彼女と歩いていくための準備だ。一人に慣れた僕が彼女とどこまでやっていけるかはわからない。
「とりあえず・・・僕も会社に行ってすべて捨ててこようかな・・・。」
彼女は今日家族を捨ててくるのだろう。
そうして、僕のところに来る。
僕のものになるわけではないけど彼女は僕と歩いてくれるのだ。
つかの間の幸せ。最期に向かうのに美女といられることは男として幸せだろう。
「彼女とどうこうなりたいとは思ってないよ・・・ねえ、母さん。
もうすぐ、そっちに行くよ。彼女は連れて行きたくないなぁ・・・。」
ガチャ・・・。
「ただいま帰りました。」
彼女が帰ってきたらしい。
「おかえりなさい、都さん。」
僕はいつも通りの表情を作れているのだろうか。
荷物を見せて彼女が言う。
「無事帰ってきましたよ、ね?優都さん。言った通り・・・。」
あぁ・・・。なんて、寂しそうな笑顔だろう。
綺麗な顔は確かに笑顔を作っているのに、どうしてか寂し気なのだ。
僕もこんな風に自分が思っているのとは違った顔をしているのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます