静寂(彼の場合)

 家の前で彼女を見る。

僕の目に映る彼女はきれいだった。


 部屋に入って僕は母親の部屋に入る。

彼女の着替えを出さなければと思ったのだ。

「おいで。」

彼女を呼ぶ。彼女は不思議そうな顔をして部屋に入ってきた。


 母親が死んでから、僕は母の部屋をいじっていない。

さすがに掃除はするが、すべての配置は変わらない。

水商売をしていたとき、母親はナンバーワンホステスだった。

だから若々しく居たかったのか、それとも父親と別れたことが

母親に何らかの影響があって少女趣味になったのか。

母親の部屋はピンク基調でレースやリボンにあふれている。

母親の部屋に入ったのは僕の家族以外で彼女が初めてだ。


 彼女に母親の服を渡す。体格が似ているからサイズは大丈夫だろう。

彼女は何か聞きたそうな顔をしていた。

けれど聞いてくることはない。

「お風呂を沸かすから、先に入って。」

「・・・わかりました。」


 彼女はお風呂の準備ができた後、すぐにお風呂に入った。

ずっと、何かを聞きたそうな表情をしていたが、結局、何も僕に

聞いてくることはなかった。

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