整然(彼女の場合)

 「母親の部屋だよ。」

そう言った彼の眼はどこを見ているのかわからなかった。


 お風呂を勧められる。

普段なら父親以外の男性にお風呂を勧められるのは

あまり好きではない。

まぁ、シチュエーションが違うのだが・・・。


 髪を乾かし、脱衣所から出ると彼はリゾットを作ってくれていた。

「僕もお風呂に入ってくるよ。後で、話をしようか。これからの僕たちの。」

彼はそう言って微笑んだ。

彼がお風呂に入る。

その間、ぼぅっと部屋を眺める。

整った部屋、作られたような空間。

不釣り合いなピンクの部屋。

彼はいつも何を思ってこの家で過ごしているのだろう。


 彼がお風呂からあがってくるまで、私はずっと思考の森をさまよっていた。

「おーい?大丈夫?疲れた?」

急に目の前に優都さんの顔が映る。

少しびっくりした。

いろいろと聞きたいことはあった。

でも、さっきのどこを見ているのかわからい彼の顔が思い出されて、

何も聞けなかった。


 二人でリゾットを食べる。

「味付け、大丈夫かな?いつも自分の分しか作らないから、味付けが僕好みになっているんだよね。」

苦笑いしながら彼が言う。

家族で食べる食事よりも楽しい気がした。

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