第7話『写真』
彼女がその写真見たのは、高校1年生の時でした。
友人の家に遊びに行って、部屋にあったアルバムで偶然それを見つけたのです。
川を背にして撮られた写真で、友人とその隣には中年男性が写っています。2人はとても親しそうに見えます。
「この写真の人って、あなたのお父さん?」
彼女は友人に訊きました。
「ううん、違うの」
「じゃあ、知り合いか親戚?」
「それも違う」
「じゃあ、誰?」
「……それが、分からないの」
友人が言うには、その写真は気付いたらアルバムの中にあったそうです。
誰かも分からない男とのツーショット。しかし、写真の中の彼女はとても楽しそうに笑っています。
写真に写っているのは、昨年キャンプに行った場所に間違いないということですが、そんな男性がいた記憶はないそうです。
彼女はその時は、友人が忘れてしまっているだけだと思ったそうです。
去年のことでそこまで忘れているのも妙ですが、そう思わないと辻褄が合わなかったのでしょうね。
こうして、写真のことはそれぐらいにしておいて、別の話題に移りました。
そして、他愛のない会話をしてその日は過ぎていきました。
数日後、彼女は自室の片付けをしていました。
乱雑に積み上げられた本が今にも崩れそうになっています。脱ぎ捨てられた服もあちこちに散らばっています。
彼女はそれらを抱えると、とりあえず適当な場所に移して、それからまたどうしようかと考えます。
それを何度も何度も繰り返して、積み上げられた山を少しずつ崩していくのです。
一見すると乱暴な片付け方でしたが、とりあえず山を小分けにしないとどうにもなりません。
そのうち、古い漫画や雑誌が出てきて、ふと手が止まります。
何気なくそれらを見ていると、また余計な時間を浪費してしまったと気付くのです。
そんな訳で、片付けはなかなか進みません。
その何度目かの小分け作業の時、古いアルバムが出てきました。
するとまた手が止まります。
懐かしんでパラパラとめくると、ある1枚にその目が釘付けになりました。
あの男が写っていたのです。幼い彼女を見守るようにその隣に。
その姿は、友人の所で見た物と全く変わりがありませんでした。今見ている物の方がずっと前に撮られたにも関わらず。
彼女は血の気が引いていくのを感じたそうです。
この男は誰なのでしょうか?
その答えが、単なる合成写真なら難しくないのかもしれません。
だが、それならなぜそんな加工を施したのでしょうか?
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