第3話

夫は今の生活に、何も不満はない。


数年前に恋愛結婚した嫁は、性格もビジュアルも周囲から褒められるいわゆる「いい女」である。

夫の仕事を理解し、影で支える。

衣食住はもちろん、家事もこなし、夫の趣味に口を出さない。

仕事で残業や接待が続く時には、優しくサポートするような、まさに「理想の嫁」なのだ。


嫁は今の生活に、少しずつ不満を募らせていた。


数年前に恋愛結婚した夫は、周囲の友人や親兄弟に紹介しても「本当にいい男」と言われている。

結婚後も暫くは働く事に賛成し、家事も分担してくれる。

残業や接待が続く時もあるけれど、年齢以上に稼ぐ姿はかっこよく、結婚した今も変わらない。


お互いに現実世界での愛情バロメーターは変わらないけれど、嫁の心には誰にも言えないモヤモヤが日々膨らんでいた。


気持ちが晴れない原因が「オンラインゲーム」なのだ。


交際中から、夫が元々ゲーマーであることは知っていた。

嫁もゲームを楽しむがゆえに、結婚前には特に気にならなかったのだ。

結婚後、2人で始めたオンラインゲームなのに、気がつけば夫はどっぷりとはまり、なかなか現実世界に帰ってこない。


一方で夫は、嫁のことを「オンラインゲームに理解のある嫁」として、周囲のプレーヤーにも紹介している。

夫の周囲には既婚者プレーヤーも多く、嫁の話が出るたびにネタの様に、

「果報者め~モゲろ!爆発しろ!」

とチャットが飛ぶような関係を仲間内で築き上げている。


国民的大人気RPG「ドラグニア」がMMORPGとして登場して早3年――。

気がつけば夫は、ゲーム内でも”リーダー”と呼ばれる存在になった。

グループ同士の交流を頻繁に行い、プレーヤーイベントも自ら手がけるようになっていた。

個人的なゲームブログも開設し、SNSもフル活用し多くのプレーヤーと交流を持つガチなネトゲ勢へと成長。


そんな夫の姿を見て、嫁は誰にも言えない悩みを心の奥底に抱えるようになっていた。

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ネトゲの王とリアルな嫁 夜明アリス @alice-wr

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