4月25日 晴れ

 犬は思いのほか便利だった。

 危機察知能力が異様に高いのだ。

 今日も太陽が登り切る前、まだ薄暗い六角岩の群生地を移動し始めると、彼が生物を見つけた。

 体長5メートルはあろうかという、巨大な生物だ。

 見たことのない生物は、六角岩の根本のあたりをガリガリと食べていた。


 犬はそいつを見えない位置から察知し、私に警告してくれた。

 そのお陰で奴に見つかることはなく、回避することが出来た。

 父から教わった知識によると、犬は私達の何百倍もの感度の鼻を持っている。

 その鼻のお陰で、見えない位置にいる存在にも気づけるのだろう。


 また、犬は優秀な狩人でもあった。

 地面についた目に見えない痕跡をたどり、食料となりうる獲物を見つけ出すのだ。

 それは私が生物を見つける方法とは異なる。

 だが、だからこそ良かった。

 私と犬。二人で行動することで、その捜索力は2倍にも跳ね上がるのだ。


 犬のお陰で、最初は生物などいないと思えた六角岩にも、獲物が多数いることが理解できた。

 大半は避けなければならない生物で、残った大半はそいつらの獲物だ。

 私も犬も、獲物側だ。

 水場にたどり着くまでにそうした生物と出会わなかったのは、運が良かったからだろう。


 しかし、犬と一緒にいるおかげで、六角岩を無事に抜けることが出来そうだ。

 未だ、六角岩が途切れる気配は無いが、方角を確かめつつ、目印を付けて行動することで、まっすぐ直線に進めている。


 犬と手を組んだのは、本当に正解だった。

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