4月15日 晴れ

 今日もまた、何もなかった。

 しかしながら、食料には余裕があるため、焦りはない。


 今日は日差しが強く、風が無かった。

 太陽に背を向けるようにして歩く。

 ザクザクという自分の足音を聞きながら歩いていると、進行方向上に蟻塚が見えた。

 規模がどのぐらいかはわからないが、この距離で見えるということは30メートルを超える大きさだろう。

 風が無いことが幸いした。

 もし砂が舞っていれば、知らずうちに塚アリのテリトリーに入ってしまっていただろう。


 塚アリは群れで行動する凶悪な生物だ。

 大きさは2メートルから3メートル。

 自分たちのテリトリーに何かが侵入してくると、音もなく包囲し、拘束。

 特殊な針を首に打ち込んで、侵入者を意のままに操ってしまう。

 針が打ち込まれた侵入者は、そのまま蟻塚内部の食料庫に運ばれ、肉団子へと変えられる。

 もちろん、体験したわけではない。

 そう、父から聞いたのだ。

 あるいは、祖先の誰かが蟻塚の中まで侵入し、脱出することに成功したのだろう。

 私は、やるつもりはない。


 私は進路を大きく変えて、蟻塚を離れることにした。

 完全に食料が尽きている時は、例え相手が凶悪でも殺して食わなければいけないが、今は必要ない。

 先日見つけた砂トカゲに感謝するとしよう。

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