4月16日 晴れ
尾行されていることに気づいたのは昼過ぎだった。
恐らく、塚アリの一体だろう。
塚アリのテリトリーは、円形ではなく、地面に張り巡らされた巣の形に比例する。
昨日はテリトリーに入らずにやり過ごせたと思ったが、どうやらどこかで引っかかってしまったらしい。
こうなると、塚アリはしつこい。
自分たちの領域を侵犯した相手としてマークしてくる。
これは、奴らの本能的な行動だと父に教わった。
塚アリの群れと群れがぶつかり合う時は、まず偵察アリの小競り合いから始まる。
互いの偵察アリを発見した場合、その偵察アリを尾行、時には襲撃し、相手の群れの位置を探るのだ。
もっとも、相手がアリでなくともこの行動は行われる。
どのみち何が相手であれ、見つけた相手を追いかけて殺せば、貴重な食料となるからだ。
しかし、運のいいことに警戒レベルは低いようだ。
視認できたのは一匹だけ。
これが知らず内に入り口付近まで歩いていれば、3~4匹の偵察アリに追い掛け回されることとなっただろう。
とはいえ、昼下がりまで逃げ続けたが、どうにも諦める気配がない。
夜になれば寝込みを襲われる可能性が高いだろう。
なので待ち伏せし、狩ることにした。
岩場へと誘いこみ、水とミミガエルの油を使って体の匂いを消し、砂の中に潜伏。
真上を通りがかった所で、飛び出し塚アリの頭と胴体の間に、杖を突きこんだ。
先端の尖った杖の先端には、以前取得しておいた毒砂トカゲの毒が塗ってある。
塚アリは一時間ほど毒に苦しみ、暴れていたが、日が落ちる直前には動かなくなった。
杖は折れてしまっていたため、塚アリの足を一本削り、代わりとすることにした。
大量に食料が手にはいり、嬉しく思う所だが、残念ながら持ちきれない。
食料より、匂い消しに水を使ったため、そっちの方が足りなくなってきた。
明日からは水場を探そう。
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