読了「うどんむすめ」作:NUJAWAKISI
『満月の夜になると、あたし、うどんになっちゃうの・・・。』
――本作のキャッチコピーより。
本作は短編にあたる。なので、立ち食い間隔でささっと読めてしまう。
ジャンルはホラー小説である。
満月の夜に、うどんになる。
想起されるのは狼男だが、うどんになったからといって、さて、どうだというのだろう。
…いや、今うどんって言った? という程、本作のキャッチコピーにはインパクトがある。
良い作品というのは、良い文章である事よりも、話題になる事のほうが重要であると言われている。
何故ならば、話題になれば、手に取る人も増えるし、売れるからだ。
それ故に「企画力のある作品」というものは話題性の点で大きな強みがある。
そして、話題性の有無は企画力だけにとどまらない。
語りたくなる。という作品もまた、話題性のあるものの一つなのだ。
正直なところ、本作は読み終えた後、物凄く語りたい!という衝動に駆られた。
さて、主人公がうどんになってしまうと、常識的な人間でさえも、その立ち上る湯気と香りに正気を失ってしまう。
うどんになるとまったく身動きができない。加えて目の前には、正気を失い、喰らわんと迫ってくる人間。
どれほどの恐怖だろうと、想像するだに恐ろしい。
そして、こうした特異体質の主人公は、自らの体質にコンプレックスを抱いている。
にも拘らず、彼女が抱えるそれは、他者からは非常なほどの魅力に見える。
この図式は、まるで女性的魅力と周囲からの(主に男性からの)視線。といった一面において、ある種のメタファーさえ感じさせる。
さて、そうしたうどんむすめに一目ぼれした青年があらわれる。
一目ぼれのきっかけは、前述したうどんへの変化する瞬間を見てしまった事に起因する。
愛欲はときに、文字通り全てを喰らってしまいたいほどの暴力性を持つ。
正気を失うほどの魅力と、それに取りつかれ、愛欲を募らせる青年。
そうして訪れるクライマックス。
それまでコミカルだった設定が、一気に恐怖へと変じていく展開。
青年の狂気と、結末の描写が、それまでの落差と相まって素晴らしい恐怖を生む。
まさしく、ゾゾッとする作品なのだ。
ゾゾッとすする。
うどんだけに。
おあとがよろしいようで。
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