3話 弱点がわかったからには 1
異世界生活四日目。
天気は今日も快晴! でもちょっと雲が多いかな? まぁそれでもいい天気!
私は早くもすっかり寝るのに慣れた馬小屋を後にし、街の中でもたくさんのお店が並んでいる繁華街に当たる方へ足を伸ばします。
今日はお洋服(であってるのかな?)を買うのです! この世界に来てから元々解っていた事ではありますが、セーラー服一丁のみと言うのは色々な面できついです。 流石に着っぱなしではなく寝る前に軽く洗濯して夜は干して朝に着るという形をとっていたので臭いは特に問題ないのですが、身体的に精神的に段々と辛くなってきます。 夜はシーツに包まってはいるものの、洗濯する都合上、寝る時は下着ないし裸です。 今はもう秋も後半という事で、正直かなり寒かったですし、その状態で誰にも見られないために誰よりも遅くに干して誰よりも早くに回収すると言う涙ぐましい事をやっていました。 そういえば干してある服の中でジャージっぽいのを見つけたんですけど、この世界にもジャージなんてあるんですかね?
まぁそれは良いとして、そんなわけで、昨日のクエストで報酬も入ってそこそこ懐も温かくなっていますし、余裕があるわけじゃありませんが、必需品を買いに繁華街に向かっているというわけです!
ちなみに現状の軍資金は一昨日の酒場のバイトとクエストの報酬を足して12万エリス弱。
はい、何でそんなに多いんだよと思ったそこの方。 言いたい事はわかります。 ですが疑わないでください。 私はきゅーちゃんからお金を巻き上げてなどいませんし、そんなクズでもゲスでもカスな人間になった覚えはないです。 それにクエストの報酬も何なら大部分を渡すつもりでした。
ですが今回なんときゅーちゃんは、
「我は別にいらん。 元々パーティーの仲間と冒険が出来れば最低限の賃金でいいのだ。 今回は初のクエストだったのだろう? だったら餞別だ。 我は自分で討伐した分の料金で構わん」
そう言い出したのです。
ですが流石に私も年下からそんな大金受け取れませんし、そもそもあのクエストは殆どきゅーちゃんがやってくれたものです。 尚の事受け取れなかったので、その旨を伝えると、
「ならば我の報酬分で装備を整えるがいい。 そうすればパーティーへの出資と考えられるだろう?」
そのあまりの精神的なイケメンっぷりに、思わず私は思わずときめいて堕ちそうになりました。
……いや! 大丈夫! 私は年下じゃなくって年上の先輩的な人がタイプだし! そもそもかっこつけてるけどこれきゅーちゃんだし! 男の子って言うより女の子みたいな顔してるし、運動したらすぐぜぇはぁ言って、お風呂で情けない声を上げるような子だし! ……あれ? 胸のときめきが一瞬で消えた。
「おい、今何か凄く失礼な事考えているだろう?」
「でもきゅーちゃん、本当にいいの?」
「………………………………」
こめかみをひくひくと引きつらせるきゅーちゃんでしたが、やがて左右を見渡し、見られたくないのであろう御仁が酒場にいない事を確認すると、なんと仮面を取り、そのエンジェルフェイスをオープン。 さらにちょっと潤んだその紅い瞳を私に向け、
「……いい。 僕の初めての仲間になってくれた、お礼」
そう気恥ずかしそうに言いました。
………………………………。
天使過ぎるでしょもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
なんなの!? 意味わかんないよあの可愛さ! 席が向かい側じゃなければ抱きしめて持ち帰るところだったよ! あ、なんか周りの人がドン引いた目で私を見てる! 落ち着こう!
……と、まぁそんなことがあって、クエストの報酬金の12万5千の内きゅーちゃんが倒したカエル4匹分。 つまり2万エリスを差し引いた10万5千エリスが私のもとに入りましたという訳なのです。
そんなわけでまずは…………
レッツショッピング♪
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ほう、見違えたな」
ギルドの酒場に私より早く着いていたきゅーちゃんは、私を見て感心したようにそう言いました。
そう、今の私は半袖セーラー服ではなく、レザーのチューブトップワンピースを着、同じくレザーのガントレットとアンクレットを装備しています。 さらに腰にはホルダー付きのベルトを巻き、お気に入りのナイフを括りつけています。 ちょっと肩周りの露出が多く、スカートの丈が短いとは思いますが、肩は首に赤のストール巻く事で露出を減らし、下はスパッツを穿く事で対処しています。 ちなみにこのワンピース、動きやすくてとても着心地がいいです。 レザーって言うのも、駆け出し冒険者っぽくって良いですよね! また、髪も今日は下ろしたおさげのツーテールではなく、邪魔にならないポニーテールにしています。
うんうん! 冒険者っぽいぞ私! 下着とか荷物入れとか色々雑費含むともう所持金は半分弱になったけどね!
それにしても、きゅーちゃんって女性に対して「お、今日いつもと雰囲気が違うね」的なこと言えるんですね。 この歳でそういう気遣いができるのは素晴らしいです。 褒めてあげたくなりますね。 昨日の件といい、将来有望ですよ!
「一瞬誰かと思ったぞ」
「私の感動を返せお子ちゃま」
お子ちゃま呼ばわりされて仮面越しに私を睨むきゅーちゃんでしたが、私はむしろ睨み返してきゅーちゃんを竦ませます。
きゅーちゃんは座る私におずおずと言いました。
「……で、今日はどうするの? クエスト? だったらまだ昨日と同じジャイアントトードのクエストが受けられるみたいだけ「それはやめておこうか」……う、うん」
あれは確かに良い稼ぎにはなりますが、さすがにトラウマを連日で繰り返すつもりはありません。 それはもうちょっと日を改めてから受けたいと思います。
きゅーちゃんを「こほんと」咳をし、
「……じゃあ、森の方のクエストを受けるの? だけど流石に2回目でいきなり森は難しいと思うよ。 なにより、昨日辺りからなんか強力な悪魔型のモンスターが住み着いているらしいし、今は受けないほ」
「え!? 悪魔がいるの!!?」
「何時に無くテンション高いな……。 みたいだよ? ていうかなんでそんなに目をキラキラさせてるの?」
「え!? ……や、やぁ、なんでもないよ!?」
いや、実際なんでもなくは無いです。 めっちゃテンションあがってます! だって悪魔ですよ悪魔! RPGだとかなりの強敵である事が多いあの悪魔です! ふおぁー! 一体どんな感じなんでしょう! 巨大なカエルもファンタジーではりますが、やっぱりよりらしいものがいるって事を示唆されると興奮してしまいます!
「……まぁいいけど、悪魔って非常に危険なモンスターなんだよ。 今の僕たちじゃ太刀打ちできないよ」
「大丈夫大丈夫、そのくらいは解ってるし、流石に戦う気はないよ。 ちょっとサインを貰おうかなと思っただけだよ」
「全然解ってない! 悪魔の契約じゃんかそれ!」
地味に上手い事を言ったきゅーちゃんは、「とにかく、そういうわけで森のクエストは無しの方向で」と続け、
「受けるならやっぱり草原の奴にしよ。 まだ駆け出しなんだし。 なんなら採取のクエストも今ならあるみたい…………あ、でもあれは森の中に行かなきゃいけないし……カエル以外なら、スライム? いやでもそれもまだ難しいだろうし……」
あれやこれやと代替案を出してくれます。
きゅーちゃんは相当やる気みたいですね。 パートナーとしてとても嬉しい限りです…………ですが!
「ふっふっふ……きゅーちゃん。 実は今日はクエストを受ける訳じゃないんだよ」
「え、じゃ何で集まったの僕ら」
わけが解らないといったように怪訝な表情を見せる(見えないけど)きゅーちゃん。
クエストを受けなのいのになんで集まったか? そんなの決まってるじゃない。
「教えてあげましょう! きゅーちゃん、今日はあなたのスタミナ不足を解消する為の特訓をするのです!」
そう高らかに宣言した私は、逃げようとするきゅーちゃんの首根っこを掴み、酒場を出ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます