純粋な悪徳

@Yuika1019

第1話

(嫌だな。どうして学校なんか来なくちゃならないんだよ。)


協調性が無い。おとなしい。可哀想な奴。つまんない奴。

分かってるさ、そんなの。

正直、春の課題提出しないから行きたくないってのもあるけど。

クラスには知ってる奴もいない。それは別にいいけど、この騒がしいのはどうにかなんないかな。

「春休みのしおり、集めまーす。前に持ってきてください。」

(え?なんだ、それ中学にもあったっけ?…いーや、別に持ってかなくても。)


キーンコーン カーンコーン


(やっと放課後か、家に帰ってもすること無いし、はぁ〜。…あれ?よく考えたらここ、寝心地いいかも)










………………………………………………









?「ねぇ?…」


?「おーい、となりくん??となり 大雅たいがくーん!」


なんだ…誰か僕を。


?「千影ちかげ?なに、隣くん起こしてるの?」



もう一人…?



?「うん。だって寝てるし、春休みのしおり出して欲しいもん。」



?「…じゃあ、廊下にいるから」



?「うん。」


…あー。


そういう事か。起きたらめんどくさいな。まぁ、無いって言えばいっか。



?「おーい、おーい!」



僕「…起きたよ。だから頭揺らさないで。」


千影「あ、やっと起きてくれた。私は神槍かみやり 千影ちかげ。自己紹介の時も寝てたから。覚えてないでしょ?」


僕「…神槍。あぁ、あの双子の姉か。」



成績優秀。運動神経も良くて才色兼備…みたいな完璧女子って、前の席の奴が話してたな。そっか同じクラスだったんだ。でもなんだろう。顔は整ってて髪は黒くて長くてさらさらなのに、なんか不気味な感じ。こういうのをミステリアスっていうのかな。




千影「それでね!春休みのしおり出して欲しいんだけど。持ってきてるよね?」


僕「…いや。それ忘れたから僕が明日先生の所出しに行くよ。」


千影「…もう!だめじゃない!今日中なの知らなかったわけじゃないでしょ?ほら、手伝うからさ!はやく終わらせよ?」


神槍千影の笑顔はとても綺麗だった。

美少女のスマイルはこんなに元気が出るのか。


まぁ、でもそれとこれとは別。もともと提出する気ないし。僕が提出物なんてしちゃダメだ。



僕「ごめん。あの…僕さ。」



千影「駄目よ。」



僕「…え?」



千影「それは今日中に集めなければならないものなの。学級委員はしおりを必ず今日中に集めて出すって、約束してしまったんだから。」




僕「…えっと、ごめん。ほんと、今持ってなくてさ。だから__」


千影「…………いや。」



僕「…………。」





千影「…どうしてよ!!!怒られるのは嫌なのに。怒られるのは嫌だよ。どうして?!なんで忘れたの?隣くん以外誰も忘れなかったのに。…いや、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやああ!」








僕「え、は…。ごっ、ごめん。…わっ悪かったよ!」



神槍 千影のおかしな態度に、というより目に、恐怖を覚えた。




でも、そんな異常な光景の前で、1つ質問が浮かんだ。




僕「…あ、のさ…。」



僕「怒られるって、……誰に?」










千影「…………。」




黙った。




神槍千影の目が吸い込まれそうなくらい

真っ黒で、光が無い。

澄んでいて濁ってて暗い。真っ黒だ。


俺が質問してから1分近く沈黙が続いた。


…すごく怖い。







?「…ああ!あのさ」



僕「!?」




?「千影ちゃん。落ち着いて?僕が彼の家に行って、しおり取ってくるからさ。」


僕「えっ、は?」





千影「……あ!それいいね。ちゃんと今日中に出すんだよ?奏多かなたくん、学級委員として、頼んだからね。」


僕「…え、え!」


神槍千影は足早に教室を出ていった。



僕「なっ、なんなんだ…っていうか、君は何?」


奏多「僕、神槍かみやり 奏多かなた。千影の弟なんだ。…そうそう、しおり。君の家に取りに行ったりなんてしないから。君が、さっき言ったように明日先生に提出してくれればいいよ。」



(はぁ〜…………助かった。のかな?)





僕「……う、うん。まぁ、分かったけど。……さっきの神槍…千影さん。怒ってた?」


奏多「え、気になるの?」


僕「…そりゃあ、あれだけ取り乱してんだから。気になるよ。」




神槍奏多…黒髪で中性的な顔立ち。細身な腕や首は、触ったら折れそうなくらいに見える。美少年だな。それにしても、この双子は一体。



奏多「…忠告。」


僕「え?」



奏多「やめときなよ。千影ちゃんを知ると、ろくな事無いよ?」


僕「……どう、いう意味。」


奏多「そのまんまの意味。じゃあね!」


僕「…え?お、おい!」


奏多「…あ!ほんとにしおり提出したほうがいいよ!絶対だからね!」



神槍奏多は何かを追うようにして廊下を走っていった。


僕「ちょ、待ってって!」


(くそ。全然追いつけない。離れてく。)



神槍奏多を見失った後、久しぶりにクラスで会話したのに、変な奴らと話しちゃったな。なんて呑気に考えながら帰った。



この時に、しおりくらい出せば良かったと、後悔することになるのは、まだ先の話。

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