第4話 デート

「うう、うう」

 唯は夢を見ていた。

唯の顔はとても苦しそうだ、酷くうなされ、汗でシーツがびっしょり・・・


  {唯の夢}

 「唯、愛しているわ。」

 智絵が耳元でささやいてくる、彼女はなぜかピンクと白の下着姿。

 「こら離れろ!」

 私は絡み付いてくる、智絵を押しのけようとする、

智絵はそれでも離れない。そんな私に智絵が甘い声で囁いてくる。

 「どうして?気持ちいいのでしょ?」

 「気持ちよくなんかない!」

 私は必死に抵抗する。

 智絵が手を伸ばしてくる。

 「やめろっ・・・あぁ・・・いっ・・・いくっ、」


 「うぁー」

 私は飛び起きた。夢にたたき起こされ、夢の内容に混乱し、

思わず周りをキョロキョロと見回す。

 「はぁー」

 溜息をつき、自分の手を見る。

手は汗でぐっしょりと濡れている。そのまま目線を横にそらすと智絵が夢と同じピンクと白のかわいらしい下着で寝ている。

 「お前は外国人か」

 私は優しく笑いながら、智絵の額を長い指先でつついた。

 すると、智絵は穏やかだった顔をひきつらせ、目を開ける。

 「おはよう」

 私は寝ぼけた声で挨拶してくる智絵を睨む、

 「どうしたの?怖い顔して?」

 いまだに寝ぼけた声で問いかけてくる智絵に言った。

 「お前のせいで酷い夢を見たよ。」

 私はあきれた声で起き上がろうと上半身を起こす智絵に言う。

 「?」

 智絵は何の事か分からず、何を言っているの?と言いたそうに首を

 傾げた。

 そんな不思議な朝を迎えた私の現在の状況はこうだ。

 病院を退院した私は、先生兼、現在の母である凛の言いつけで、加賀家で暮らす事になった。道中、智絵に服など生活用品について聞くと、

 「私が唯の部屋を準備したから何の心配もいらないわ」

と微笑みながら私の顔を覗き込む智絵に言われた。

 私は、不安に駆られながらも歩みを進めた。

家に向かう途中、退院する前に母である凛に言われた事を思い出し、下を向く。

 「智絵に精神的に問題がある・・・」

 「唯何か言った?」

 唐突に智絵が言う。どうやら自分でも知らない内に

思っていたことが声に出ていたらしい。

 不思議そうに私を見つめる智絵に言う、 

 「いや・・・・なんでもない。」

 今の智絵の顔を見ると、とても精神的に問題があるようには見えない。

・・・・・。

 「家までもうすぐよ、唯」

 「あぁ」

 こぼれるほどの笑顔で、下を向いていた私に智絵は声をかける。

私は、そんな智絵に微笑みを向けた。

 

 そんな笑顔のやり取りを繰り返すうちに、加賀家、これから私の家となる家に着いた。加賀家は異様に大きく白かった、驚く私に智絵は言う。

 「中に入って」

 家に着いた私達を父、アリゾナが迎えてくれた。

迎えてくれたアリゾナを見る智絵は、悲しそうだった。

 そんな智絵を見てアリゾナは、言った。

 「智絵、悲しい時は泣かなくちゃ。これからはお姉さんもいる事だしね。

 「分かった」

 智絵は微笑んだ、悲しい目をして。

 「唯、部屋に案内するわ。」

 そういって二階に続く階段へと向かう智絵について行く。階段の前で智絵は振り返って、「部屋は二階よ」そう言って前に向き直り階段を上がり始める。

 私は、そんな智絵の悲しい背中を眺め振り返った。

 アリゾナは、まだこちらを眺めていた。アリゾナは何か言ってくる、だが距離があり声は聞こえない。でもなんとなくアリゾナが何を言ったのか伝わった。 

 「智絵をよろしく」

 私は頷き、智絵のいる二階へと向かった。

 「ここよ」

 私は大きな部屋に通された。

 「デッケー」

 「ふふふ」

 部屋の大きさに唖然とする私に智絵は笑う。

 「智絵、着替えどこ?この恰好じゃなんだから、着替えたいんだけど、」

 そう言った今の私の格好は、凛の私服だ。

 凛の服は、かなり清楚で白くまるで白衣だ・・・・私の趣味には

残念ながら入っていない。

 クローゼットに向かう。

服は・・・さすが智絵、十年間たった今でも私の趣味を分かっている。

しかも下着のサイズまでぴったり・・・・・、なんで?

 そんな事を思いながら智絵に背を向けて、着替え始める。

 「でもさすがだな!智絵!」

 だんだんテンションが上がってきた私は、言う。

 「どっ、どうした?」

 着替え終わった私の背中に、智絵が顔を隠すようにしてもたれてくる。

私は妙に緊張して、上ずった声で智絵に話しかけた、すると

 「あぁ・・・・あっはぁ~~~~」

 智絵が泣き始めた。私は訳も分からず何もできなかった。

 数時間経って、智絵は泣き疲れ寝ていた。

気が付くと外はもう真っ暗だった。

 私は一階にいるアリゾナの許へ行く、アリゾナに聞きたいことがあったのだ。

 「アリゾナ、聞きたいことがある・・・・・・・・十年前について」

 唐突に聞いてきた私にアリゾナは、分かったといってくれた。

それから数時間話した、話が終わったのは夜の十一時。

話が終わって数分後、智絵は、まだ赤い目を擦りながら下りてきた。

 「おはよう」

 「まだ朝じゃないよ」

 そんな事を言う。

 「そうなの・・・・・・くぅー」

 智絵のお腹が鳴った、智絵が頬を赤らめる

 「・・・・・・そっ、そういえばご飯まだだったね」

 アリゾナが引きつった笑みをする。

 「そっ、そうだね」

 慌てて私が返す。

 「もうっ!二人ともいじわる!」

 三人で笑う。

 「ただいまー」

 透き通った声が響く、凛が帰ってきたのだ。

 「「「お帰り」」」

 三人で玄関まで出向く。

 「ただいま」

 アリゾナが言う。

 「三人ともご飯まだなんだ、凛は食べたかい?」

 「まだよ。」

 「じゃあ、ご飯にしよう」

 四人は遅くなった夕食を食べている。

 アリゾナが作っていてくれたおかげで

すぐに夕食を食べられた。

 夕食の間、私はアリゾナの話を思いだしていた。


 アリゾナによると、十年前事故があった日、凛は偶然事故現場にいたのだという。

まだ病院に入って間もない凛は、人の血も見たことがなかった。

冬馬家の両親を見てその場に立ちすくんだそうだ。

そこに女の子の悲鳴が響いた。

悲鳴の聞こえた方へ行くと、当時5歳の智絵が倒れていた。

 智絵の目線の先には、当時6歳の私が血まみれで倒れていた。

すぐにまだ息をしていた、父と私を病院に運んだが、

 父の命は助けられなかったと言う。

 アリゾナは、ここまでしか凛からは聞いていないと言って、話が終わった。

そして凛はこの事を酷く悔やんでいると。


 「唯! いいわよね! 」

 私の耳に智絵の声が響いた、

 「なっ、なに?」

 「聞いてなかったの?今度デートするわよ」

 「えっ?デート女同士で?」

 「良いじゃない、凛とアリゾナも女だけど、夜楽しんでいるわ。」

 悪戯な笑みをしていた、まるで小悪魔だ。アリゾナと凛は頬を赤らめている。

 「アリゾナは元々男だろ!」

 「良いじゃない、行きましょう!」

 こうして私たち姉妹はデートすることになった。

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