第3話  私たちの親

 「智絵ちゃん私のガールフレンド連れてきたよ」

 白衣を着た女性が言う。絵にも表せない満面の笑みで。

 「ガッ、ガールフレンド!!!」


 (ガールフレンドって「彼女」って意味だよね。)

 5歳の時見た海外ドラマを思い出してつい叫んでしまう。

 「シー、静かに、ここ病院」

  先生が言う。

 「すみません」

自分が行った行動の恥ずかしさに項垂れる。

 「分かればいい」

 「はぁい」

陽気なイントネーションで女性が現れた。茶色がかった金髪に青い瞳。流れる汗もアクセサリーのように輝き、爽やかな大人を感じさせる。

 「アリゾナさん! 」

 陽気な声の女性に智絵の声が続く。

 「私のかわいい智絵~~」

 アリゾナと言われた女性が智絵に抱きつく

 「お酒臭い~」

 智絵が助けを求めてくる。

 「あの、どういうことですか!」

 「あっ、唯紹介するね。こちら加賀(かが) 凛(りん)、私たちの母」

 白衣を着たポニーテールの女性が紹介される

 「どうも、加賀凛です。」

 「こちらアリゾナ、私たちの父」

 「Nice to meet you」

 私の脳内に疑問符が湧き出た。

 「女だけど、父親? 」

 アリゾナが言う。

 「性転換したアメリカ人です」

 「そうですか、日本語うまいですね」

 「ありがとう御座います」


 「「変な会話ね」」

 脈略のない会話に智絵と凛が言った。続けて凛が言う。

 「そうだ唯、あなた退院ね。あと今日から家来なさい。」

 「「えっ」」

 智絵と唯が叫ぶ、その光景を見たアリゾナが「仲がいいですなー。」

 「え~、そんな~」

 「爺みたいに言うな!」

 智絵は頬を赤らめて言う、そしてまたもや二人同時だ。

 「唯ちょっと来て、そこの車いす使ってね」

 そんな愉快な会話の仲で凛が私を呼びつけて部屋を出て行った。私はぎこちない動きで車いすに乗り込み、凛を追って廊下に出た。


 廊下をしばらく歩き、給湯室に入る。

 「十年前の事故、トラックを運転していた人はお酒を飲んでいたの」

凛は冷淡な声音で話す。とてつもなく怖い凛に私は汗が止まらず戸惑いながら声音を発した。

 「ちょっと待て、なんでそんなこと言うんだ」

 「良いから聞きなさい」

 凛が激しく語気を強める

 「それを知った智絵は車を見ると過剰な反応を示すようになったの、

我を失った彼女はいつも、貴方の名を呼んでいるわ。」

 智絵は我を失った時、冬馬家の両親ではなく、私を呼ぶ。

(なんで・・・・。)

 「だから絶対に智絵の目の前で貴方が傷つくようなことしないで」

目を細めてつぶやく。

「あら先生、失礼しますね。」

看護師がお辞儀を軽くしながら給湯室に入ってくる。

 「はい、母さん」

 私は新しい母に向かって、微笑んだ。

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