真意を知るために口を閉ざす

誰もが考えるまでもなく、アンナはロングソファに倒れ込んだ。青ざめたままで。子どもなら、甘えても罪にならない。しかし、この執事は甘えを良しとしない口振り。誰もが思うだろう。まだ子どもなのだから、改善の余地くらいあるはずだと。人の性格は変われずとも、認識は変えられるのだから。彼女の生活にそれがないとでも言うのだろうか。

母親と話せるのなら、自ずと母親が口にするのを待てばいい。それすらも許されないのだろうか。


夜々の顔から、苛立ちが目立ち始めていた。優しいからではない。茉璃にも、軽くとも辛辣だった。後ろにいる"山科夜伽"は、"子ども"が嫌いなのだろうか。

いづれ直面するにしても、今言うべき内容でないことくらいわかるはずだ。は?


更に、残された"受刑者"たち。自分たちは何を言われるのか、不安になっているはずだ。細身で小柄な男性と夏生。


そして、夜々。


何となく、夜々は感じていた。……自分が最後なのだろうと。ここに連れて来られたと言うことは、"バレてはいない"。逆に聞かれるのだろうか。それとも、あの"造り"が同じ屋敷に住んでいた説明でもされるのだろうか。


全てを知る権利くらいあるはずだ。何故、彼らは選ばれたのか。聞いていても、ランダムにしか分析できない。


執事から目を話さず、けれど、何も口にしない。何の感情も示さない執事。微動だにしない"山科夜伽"。


真意を知るために、"夜々"は口を閉ざす。


果たして彼らの基準は何なのか。だが、"夜々"は希望を失ってはいない。

見ず知らずであるこの六人を救う手段を考えなくてはならないから。


何故助けたいのか。果たして救えるのか。どちらも不明瞭だ。目的さえも不明瞭な中で、自分の目的を達成するのは至難の技。


……残るは二人?三人?"夜々"には何もない、はず。ゆっくりと執事が視線を動かして、吟味しているのは二人。


"夜々"には目もくれない。彼女はターゲットではないだろうか。怪訝な顔と言うより、睨むように執事を見ていた。

気がついていないのか、気にも止めていないのか。執事は"夜々"を見ない。それが何を意味をするのか。


何も知らされていないこの状態では、予測など出来ようがない。……無意識に"夜々"は唇を噛み締めていた。自分の置かれている状態が、彼らと何ら変わらないことに。

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