怯える、三人目
少女は、自分の置かれている状況をどう捉えたのか、ガタガタ震えていた。
「えっと、俺は"真屋夏生"って言うんだけど君は?」
自分も混乱しているだろうに、他を気にかける彼は、見た目に反して優しいのだろう。見た目で全てわかるわけはないのだが。
紛らわせようと話し掛けた夏生を見ても、怯えてしまっている。仕方なしに"夜々"が立ち上がった。少女はビクッと体を強張らせる。
「……心配しなくていいよ。ここにいる皆が、君と同じ状態だと思うから。ボクは、"山科夜々"。取り敢えず、呼び会える名前を聞いておきたい。」
膝を抱えて怯えている少女。
「……アンナ。畑中アンナ…………。」
名前だけと言ったが、本当に名前だけ告げると黙ってしまった。
「アンナちゃんか。ア……。」
更に話し掛けようとする夏生を、夜々が制止した。
「……きっと彼女は、酷い人見知りなんだと思うよ。夏生くん、君も不安なのはわかるけど、状況は考えよう。」
アンナの状況は然程変わったわけではない。多分、打ち解けるには時間が掛かるだろう。
「……ああ、そっか。ごめん……。」
矢張不安だったのか、ソファに座り直し、目をさ迷わせていた。
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