【真屋夏生】

女の子に囲まれ、笑っている。

けれど、どの女の子もタイプじゃない。派手な化粧に、高そうなアクセサリー。男の気を引くために努力しているのは、尊敬出来る。

でも、彼には無意味だった。飾らない女の子が好きだから。


垢抜けた大学生になろうと、茶髪にした。元々容姿はいいから、何でも似合ってしまう。話し方も、周りに合わせて。


でもそんな彼も実際は、物腰柔らかく真面目な性格だ。成績も上位をキープする努力家。


しかし、モデルやアイドルにスカウトされるばかりで外見しか見られない。内面を見てもらえなさにヤキモキしていた。だからと言って、なにがしたいわけでもない。就職もままならないまま、惰性で過ごしていた。


一人暮らしの我が家に帰宅したのは、日付が変わる少し前。周りに流され、解放されたらこんな時間だ。勉強や睡眠は確保したいから、何とか抜け出してきた。


「ホント、俺は何がしたいんだろ。」


独り言をぼやく。反って来るはずもない、問いを。


間接照明に照らされたリビングのテーブルに目が向く。赤い封筒が不気味な空気を放っていた。


「え?何で……。誰か来たの?」


『真屋夏生様』


自分宛ての黒い太字の封筒。周りを見渡し、封を開ける。中には、便箋が一枚。






『真屋夏生様


時は来ました。お迎えに上がります。』






気味の悪さに身震いする。意味がわからないまま、震える体を押さえた。

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