【山科夜々】
屋敷の中で彼女は赤い封筒を開けもせず、睨んでいた。
「……くそったれな日常を打破してくれるには、物騒な手紙だね。」
『山科夜々様』
黒く太い無機質な文字。危険を孕んでいるのは確かだ。
「この"名前"となると、相手は気がついていないね。"別人"だってことに。」
意味深なことを言う。
「確かにボクは、"山科夜々"だ。でも、お探しの"山科夜々"はもういないよ。」
哀しそうに笑う。
「……"夜々"、君の話してくれた物語。あれは本当だったみたいだね。だったら君のためにボクは、"終わらせ"にいくよ。」
ゆっくりと封を開ける。
『山科夜々様
時は来ました。お迎えに上がります。』
無表情で短い文章の手紙を見つめる。
「……果たして、どれだけ守れるか。はたまた全滅?ま、君のいない退屈な日常よりは刺激がありそうね。でも、強すぎるかも。……だけど、"生き残る"しか解決しないなら、"生き延びて"やるよ。」
◇◆◇◆◇◆
彼女が"山科夜々"でないなら、一体誰なのか。彼女は手紙の意味を知っていた唯一の存在。
これから始まる恐怖から、皆を守りたいと願う。
彼女は何を知っているのか。何が起こるというのだろうか。
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