6速のプレッシャー
「今日はありがとね。一緒に行ってくれて」帰り道、夏生は言い出した。
「ええよ。そんなことよりお腹へった~」
「じゃあウチで食べてく?(笑)」
「いや、それはいい」
夏生は軽くニラみ、また変速機を握ろうとしてきたが僕はサッと避ける。
夏生は笑っていた。
「・・・・」
「あ、ちょっと三陽寺寄っていかへん?」
隧道をくぐり学校の通学路をちょっと脱線すると、三陽(サンヨウ)寺がある。僕らの定番遊びスポットだ。
お寺自体はそれと言って人気スポットでもないのだが、少し広めの公園と隣接していて公園も寺もひとまとめに三陽寺またはサンヨウと呼ばれている。
適当にふらっと訪れればいつも知り合いの誰かが遊んでいてる。
更に夏休み中は、運が良ければ午後6時の鐘を鳴らさせてもらえる。
僕はとりあえず何かを口にしたかったけれど夏生が言うのでしぶしぶ公園側に自転車を止めた。
ガチャッ。自転車の片足スタンドをおろした。
「いきなりどしたん?」
僕は聞いた。
「いやちょっと・・・・、しょうの自転車に乗ってみたくなったん。」
「言うと思ったわ。そんなんまた今度でいいやん。」
「いや今がいいの。」
別に寺に立ち寄る必要ないやろ、と考えているともうすでに夏生は僕の自転車にまたがっている。
さすがに呆れたが、もうほっとこうと決意。
自分は公園の端の丸太みたいなベンチに座りビーサンを履き直した。
夏生は公園の目の前の道路を満面の笑みで5往復くらい漕いでいる。
アホかと思った。
数分後・・・。満足したのか自転車から降りて僕にこう言う。
「ありがと!坂道の時は1がいいね!」
物覚えのいい夏生は5往復で変速機の趣旨を理解したようだ。
「あと、なんかサドルが何か違うから変な感じやった」
「・・・え、サドル?・・そんなんどれも同じ・・・・」
男女でのサドルの違いは当時の僕は本当に知らなかった。
夏生の自転車のサドルを見てみると驚いた。
明らかに僕のサドルより面積が広く、おしり全体をカバーしている。
「え、なにこれ!何で女子の自転車ってデカいサドルなん?」
「う~んそれは・・・」
「・・・それは、あの・・・あれやん。だ、男女でアソコが違うからやん」
夏生が少し恥ずかしそうに言った。
「あ、そっか・・・・」
(あ!なるほど!女って男と違ってちん○んとかきん◯まが無いからサドルがデカく・・・)
(いや、待て待て。無いなら無いで別に問題ないやん。むしろ男のほうが守るべき玉があるからデカいサドルで保護されるべきじゃないのか?)
・・・と、僕は遠いところを見つめて数秒間考えていた。
まあ疑問は残るが男女でアソコに違いが有るのは事実だし、夏生の言い分にも80%くらい同意する。
そんなことを考えてると僕はふと1つのハテナが思い浮かぶ。
(そういや、女のアソコってどうなってるんだろう・・・。)
この1つの疑問が、僕の小学生最後の夏休みを大きく変化させるとは、この時はまだ思いも寄らなかった。
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