始まり
第3話 魔物娘との出会い
喉に果汁のような甘く、酸味がある液体が入ってくる。目を開けて見てみると、太陽を背に俺をのぞき込む女の子がいた。
ただ普通の女の子ではなかった。魔物娘だ。
その魔物娘は、髪の毛が草の葉を思わせる緑色の髪が短く伸びている。肌は土で汚れてるかのような土気色だ。頭には若葉が出ている。目がくりっとしていて、それがまた純粋そうな感じを醸し出している。名前は確かマンドレイクで、身長は腰ぐらいの高さだったはず。
膨らみのない土気色の胸に、ピンク色をしたサクランボが際立っている。
可愛らしいサクランボから目線を外し、いつの間に横になっていたのかわからないが、身体を起こして礼を言おうとして違和感に気がついた。
周りが木々に覆われた野外だったのだ。俺は部屋のパソコンの前で眠ってたはずなのに…… なぜだろう。
とにかく礼を言おうとして、マンドレイクの視線が下半身の股間の部分を凝視していたので、見てみると…… 素っ裸になってる!?
生まれた頃から一緒だった自慢の息子だが、子供でそれも女の子には見せれないので、慌てて手で隠した。
「いいかい。俺は裸でいるのが、趣味の人ではないからね。あと変態ではないから安心して。いや、この格好で言っても説得力がないか」
なんで裸なのかわからないが、とにかく誤解を説かなければと思い言うが。マンドレイクは、言っている意味がわからないのか首を傾げている。
「通報はしないで下さい、お願いします」
頭を下げて返答を待ってみるも返ってこず、顔を少しだけ上げて様子を見ると。マンドレイクは両手に大きな葉っぱを抱えたままドヤ顔をしていた。
うーん。これは言葉が通じてないのか? それとも、今の現状で優位に立ってるから偉そうにしているんだろうか?
「言葉わかる? 理解できてる?」
マンドレイクは、まだ首を傾げたままの状態で、どうやら通じてないみたいだ。
言語が違うんだろうか…… あっ、そういえばマンドラドラは喋れないんだった。
こうなったら身振り手振りで聞くか、地面に絵を書いて聞くしかない。
そんなことを考えてたら、マンドレイクが抱えてた葉っぱを持ち上げて
、俺に手渡そうとしてくる。よく見てみると葉っぱは器で、中に透明の液体が入ってるのがわかった。
これは目を覚ます切っ掛けになった甘いやつだろうか?
葉っぱを受け取り一口含んでみる。舌に液体が触ると、果汁の甘さが口内を覆う。やっぱり目覚める時に味わったやつだ。そのまま飲み下すと喉、胃へと甘さが伝っていく。だが、粘っこい甘さではなく、どこかスッキリとした甘さで爽やかな感じだ。
俺は葉っぱに残ってた残りの液を一気に飲み終えた。自販機に置いてあるジュースとは違う天然の飲み物だと思うと、尚更美味しく感じる。
わざわざ俺のところまで、これを葉っぱに乗せて持ってきてくれたのか。
「俺のために持ってきてくれて、ありがとう」
意味が伝わったのか、マンドレイクは屈託のない純粋な笑顔を浮かべてる。俺も釣られるように自然と顔が綻んだ。
またもやマンドレイクの視線が下半身に向かったので、俺は持ってる葉っぱを素早く息子に被せた。その行動にマンドレイクは頬膨らまして不満を訴えてくる。
「助けてもらったことには有り難いけど。俺の息子を、年端も行かない女の子には見せれないんだ」
まだ膨れっ面である。そんなにみたいのか息子を。
子供は好奇心の固まりだとよく言うが、こんなに息子が気になるとは男のマンドレイクが周りにいないんだろうか?
俺は子供がいないから、子供のあやし方はしらないぞ。
頭を撫でる…… いやいや、花があるからダメだ。お菓子で慰むは、何も持ってないから却下。子供と同じ目線の高さに持って行って、話しかける? 言葉が通じないから難しいだろうな。
あと思いつくとしたら、あれかな。
俺は腰を落として、拗ねてるマンドレイクの脇に手を差し込んで持ち上げる。触れた肌は体温が低く、人間とは違うことを再確認した。
そのままどんどん持ち上げていき。俺の頭を挟むように、マンドレイクの両足を肩に乗せ太股に手を置いて落っこちないようにする。よく子供がお父さんにしてもらう肩車だ。
最初持ち上げた時はマンドレイクは暴れてたが、肩に乗せてから大人しくなった。この格好だと相手の顔が見えないのが難点だな。
俺の頭にマンドレイクの手が頭に乗せられる感触がした。もしかすると大人しかったのは、身体が安定する場所を探してたからかも知れない。
そう考えたてたら、頭をペシペシ叩かれたので、視線を横に移すとマンドレイクが前方に指を差していた。何かいるってことなのだろうか?
なにも音や姿などはしないのだが、またマンドレイクに頭を叩かれ同じように前方を指差す。あっちに行けってことか。
俺は指示通り前に進んで行った。
マンドレイクを肩車して運んで行ってるところだが、楽しいからなのか、暇なのか。俺の歩みに合わせて、マンドレイクの足も自然と振られていた。
なんだが、自分の子を持ったかのように思え。マンドレイクの行動が愛しく感じる。
歩いてるだけなで色々と今の現状を冷静に考える時間が出来た。
まず始めにここはどこなのか? 全くわからない。今まで読んでた魔物娘が関わる本だったら、異世界に飛ばされたと思うのがテンプレだろうか。
次に言葉が通じない。大体は飛ばされて異世界だったとしても、言葉が通じてるのがテンプレだが。現状はマンドレイクには通じてない。ただ、このマンドレイクは言葉も喋れないし幼いので、言葉を知らない可能性もある。他にも魔物娘がいるだろうから、見つけたら会話してみることにしよう。
それと、これが夢かどうかだ。今素足で歩いているが、地面にある小石などの上を歩いても痛くない。痛くないということは夢なんだろうが、マンドレイクの太股の感触が柔らかく、現実なんじゃと錯覚してしまいそうだ。
どれほど歩いただろう。起きたとき真上にあった太陽も、今は木に隠れて見えなくなっている。マンドレイクに時々頭を叩かれ、そのたびに歩く方向を変えていった。周りの木も鬱蒼と覆い茂っていくと共に甘い香りが匂ってくる。その匂いはどんどんと強くなり、匂いの元だと思う大きな蕾を発見した。
マンドレイクが地面を指さしてきた。降りたいってことだろうか?
俺は腰を降ろしてマンドレイクの太股から手をどけた。予想通り肩から重みがなくなり、目の前に蕾に向かって走ってくマンドレイクが見えた。
マンドレイクは蕾に近寄ると、その表面を手で叩いてる。それに反応するかのように蕾の先端が徐々に開いていき、中からは花ではなく、文字通りの華やかな甘い香りを漂わす魔物娘が現れた。
あれは確かアルラウネだったはず。
アルラウネはマンドレイクの成長した姿で、その姿は普通の人間と変わりない上半身が現れた。
その姿は言葉で表現するなら魅惑という言葉が似合う。
鮮やかな朱色の花を頭に咲かせ、髪は葉っぱを思わせる瑞々しい緑色の髪が胸元まで伸びている。
肌はマンドレイクの土気色ではなく、外人のような白い肌をしている。身体はふっくらとした豊満な胸、キュッとした魅惑的な曲線のくびれた腰…… 見てるだけで欲情をそそる身体だ。
下半身は見えず。腰から下は頭に咲いてる花と同じ色の花びらが、腰を中心に咲いてる。
マンドレイクの面影が残っているのはくりっとした目元だけだった。
俺の知識どうりなら、下半身は存在せず、埋もれてる場所には根っこと触手があるはずだ。
アルラウネは寝ていたのか眼を片手で擦って欠伸をしながら、自分を起こしたマンドレイクに視線を向ける途中で、俺と目が合うと誰でもわかるほど険しい表情になった。が、俺を品定めするかのように上から下まで見てるうちに、表情は和らぐというよりも戸惑いに変わっていく。
最初の険しい表情から見て露出狂の変態だと思われたんだと思ったが、なんで戸惑ったんんだ?
まあ確かにこんな森の中で素っ裸の男がいたら戸惑うか…… いやいや、悲鳴を上げるか汚物を見るような感じになるんじゃないだろうか。
とりあえず謝っておこう。
「汚いものをお見せしてすみません。ただ! ただ、これだけは言わせて下さい。自分は露出狂の変態ではありません!」
アルラウネはさらに首を傾げながら困惑した表情になり、口を開いた。だが、その口から出た言葉は日本語ではなく、聞いたことがない言葉だった。
……うーん? 聞いたことないと思ったが、所々で聞いたことがあるイントネーションだ。
忘れられてたマンドレイクがアルラウネの花びらを触って、こちらを構って欲しそうにしている。それに気がついたアルラウネは視線を向けて、俺に見せてた表情とは違う柔和な微笑みを浮かべてた。
マンドレイクは身振り手振りで時々俺を指さししながら動いてる。言いたいことがわかるのか、アルラウネは首を縦に振りながら喋ってた。
端から見ると今日あったことを色々と伝える娘と、それを微笑ましく聞いてる母親という図に見える。
二人を見てた俺もいつの間にか和やかな気分になっていた。
マンドレイクが振り返り俺を見て指さして無邪気に笑ってきたので、俺も笑い返した時。どこからともなく風を切る音が聞こえ。何かにドスッと当たる音が辺りに響いた。
音の出所はマンドレイクの方からで、マンドレイクは自分の胸を見下ろしている。
俺も視線の先を見てみると。
そこには、胸から赤く塗れた矢尻が飛び出してた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます