第7話


初めて、男の人と入るお風呂。


初めて他人に見られる身体。


全てが恥ずかしくて消えたいくらいだった。


そんな私の表情を読み取ったのか

「すごく綺麗だね」ってミツキさんがいった。


お世辞にしか聞こえなくて私は何も返さず俯いたままだった。


「もう一回キスさせて」


そう言ってミツキさんはまた、私を覗き込むようにしてキスした。


今度は軽く触れるくらいのキス。


すごく優しくて…


私は不甲斐にももう一度触れたいと思ってしまった。


美しい。


その時、私は初めて人の身体を美しいと思った。


こんなにも人の身体は美しいものなのかと。


軽くキスをした後、ミツキさんの唇が私の瞼、おでこ、耳と色んなところに触れていく。


くすぐったい。


それと同時に…幸せだった。


ミツキさんの眼が…

私を欲している眼だったから。


嬉しかった。


初めて向けられたその視線に…

幸せを感じた。


唇はまだ私の色んなところを触れていく。


まだ誰にも触れられたことのない場所にも。


怖い。その気持ちが強かった。


でも、ミツキさんの「大丈夫」の一言で私の恐怖心も消えた。


今考えると何故あの時あんなに安心したのだろうと思う。




そして、その夜

私は初めて快感というものを知った。


しかしその快感は、人に求められているという感覚であり、sexという行為の快感ではなかった。





前に一度AVを見たことがある。

女の人の凄い声。


私はそれを見て気持ち悪いと思った。

人の身体が汚いとさえ思った。


それとは逆に、sexとはそんなに気持ちいいものなのかとも思った。


しかし実際は、私にはその快楽がわからなかった。


ただ、必死に私を求めて理性もない中でひたすらに私を求めてくるミツキさんが可愛いと…。


人間の本能が美しいと思った。


多分ミツキさんは数多くの人と交わったことがあるだろう。

そんな人が何の経験もない私を求めていると思うとゾクゾクしてたまらなかった。





それから、ミツキさんとはそうゆう関係が続いた。


付き合うということはなかった。


私はミツキさんではなく、私を求めてる時のミツキさんが好きなんだと思ったから。


今の関係が壊れたら……

もう、ミツキさんとは一緒にいられない気がして。


ミツキさんに離れて欲しくなくて。


あやふやなままな関係だった。





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