#003 妹と夜の桜の話
前回のあらすじ
櫻野咲という綺麗系(美人系?)のJKと会話した。可愛かった。
☆☆☆
「ただいま」
「お帰り、お兄ちゃん」
家に着き、玄関で待ち構えていたのは俺の妹、高野玲奈だった。現在中2でソフトボール部に所属している。俺好みのショートヘアがポイントだが、こいつは妹だ。惚れるなんて有り得ない。そもそも、ソフトボール部はショートヘアが共通の髪型らしい。運動部らしい決まりだ。
「なんで待ち構えてたんだ?」
「お兄ちゃん………………どうしたの?いいことあった?顔キモいよ?」
「顔がキモイのは否定したらナルシストみたいだからあえて否定はしない。だが、俺の質問に答えてはくれないか?」
帰ってきていきなりキモいだとさすがの俺でもショックを受けてしまう。実際、少し落ち込んでいる。
「いや、私はお兄ちゃんじゃなくてお母さんを待ってたんだよね」
「ほう…………そりゃなんでまた……」
「いや、牛乳5パック買ってきてもらってるから。早く飲みたいし」
「………………そうかい」
我が妹は毎日牛乳を1パック飲まないと気が済まないらしい。しかも、毎日とは言っても、飲むのは決まって夕食のみ。約1リットルある牛乳を1人で飲んでしまうのだからこいつの胃袋はどうかしてる。
本人は大人っぽいカラダになりたいだとか言ってはいるが………………
そう思いながら俺は一瞬目線を玲奈のほんの少しだけ膨らんでいる部分を見つめた。そして、次に玲奈の頭の高さを見る。
………………明らかに胸じゃなく身長の方に栄養がいってるな。
口に出すとかなり失礼なので黙っておいた。
「……分かってるもん」
……………………我が妹は俺の心が読めるようだ。すまない、我が妹よ。
☆☆☆
シャワーを浴び、夕食を済ませた俺は自分の机で勉強をしていた。
現在数学の勉強中。明日小テストがあるとか言われたし、8割正解しないと追試があるとか言うし、一応やっておかなければならない。
とりあえずテスト範囲を一通り終えた俺は時刻を確認する。既に12時を過ぎていた。
「…………もう寝ようかな」
そう思い、電気を消そうとした。その時、カーテンの隙間から家の近くに咲いている桜を見つけた。
「……まだ咲いてたのか」
まさかまだ咲いていたとは思わず、ついお花見をしてしまう。
夜の桜も綺麗なものだ。月の光に照らされ、鮮やかにピンクの花びらが宙を舞う。
もう5月だし、満開ではない。それでも、最後まで一生懸命咲き続けているのが見て分かる。
そういえば………………
ふと、先ほどあった出来事を思い出していた。
先ほどの出来事とは、満開桜でのことだ。
俺と、幼なじみ2人だけが知っているとばかり思っていた満開桜。だが、俺たちの他に知っている人がいた。
櫻野咲………………だったか。初対面なのに名前呼びさせて、恥ずかしくなかったのかな?…………恥ずかしくないんだろうな。
でも、そういったところがクラスで仲良くなる秘訣なのかもな。俺も見習わないと。
「………………あ、そうだ」
ふと、思い出したかのようにスマホの電源を付ける。そして、ネットを開く。
咲が着ていた制服。あれはどこの制服だったのだろう。それを調べたかった。
学校が分かれば知り合いにどんな人なのか聞くことが出来る。その学校に知り合いがいればの話だけど。
とりあえず、俺の通う学校ではないことは分かっている。あと、咲の着ていた制服はここら辺では見ない。つまり、咲の通う学校はここら辺ではないということだ。
学校が分かれば一番なんだけどな。満開桜のことをなんで知っていたのか聞きそびれたし。咲のことをもっと知りたい。
どこの学校なんだろう。なんで満開桜を知ってたんだろう。そして………………
「……なんで泣いてたんだろうな、咲」
泣いていた理由を知りたい。
今日、聞きそびれたことが多すぎる。
そういえば、今日別れる時に咲は「またね」と言った。ということは、明日また満開桜のところに行けばまた会えるのかな?
だったら………………俺は…………
「会いたいな」
会って、話がしたい。今日よりもずっと、たくさんのこと。聞きたい。彼女の声を聞いていたい。……………………これ、変態みたいだな。
とりあえず、明日行こう。そして、聞きたいことを聞くんだ。
そう決意した俺は、部屋の電気を消す。
電気は消しても、外にある桜は月によって明るく照らされたままだ。
………………やっぱり、桜は綺麗だ。
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